【そらる】先輩と私。【歌い手】

初デートの待ち合わせ ページ16

ドキドキと緊張しながら、駅の改札前のカフェで珈琲を二つ買って待つ。


　今日は先輩と初めてのデートだ。

柱にもたれかかってケータイの画面の時計を凝視する。

　約束の時間は10時。今は9時50分だ。



「お待たせ」

　頭上から声がして見上げると先輩が立っていた。

「わわっ、は、早いですね…」

「何言ってるの。Aの方が早いじゃん」

　くすくすと笑う先輩に恥ずかしくなって珈琲を突き出した。

「わ、私はこれを買ってたんですっ！！」


　先輩は両手で私の手ごとカップを包み込むように受け取ると、ありがとう、と笑った。



「…っ、楽しみで早かったわけではないですからね」


　つい可愛くない台詞を言って顔をそらしてしまう。





「わかったわかった」

　先輩は子供にするみたいに頭をくしゃっと撫でてコーヒーを受け取るとまた笑う。

「じゃ、行こう」


　先輩は私の手を自然に握って歩き出した。







「あの、どこ行くんですか？」

　電車は都心方面へとガタゴト進んでいる。


「新宿。見たい映画あるの」

「そうですか…ピカデリー？」

「そう。行ったことある？」

「はい、何度か父に連れて行ってもらってます」


　私はそう言って新宿ピカデリーで見たことのある映画をいくつか挙げて見せた。


「そっかぁ……あ、今日アニメ映画だけど平気？」

「は、はい！もしかしてあの…細田さんの映画ですか？」

「えっ、知ってるの！？」

「はい！！とってもあの監督の映画好きです！！」

「奇遇…！！俺もすごい好き！」

「そうなんですか！！！」



　そこからしばらく私は先輩とコアなファントークを繰り広げてしまった。

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