３２５話 ページ8
『……眠れないからさ気晴らししようと思うんだけど出久も来ない？』
丁度いいと思った。私も眠れないし、出久も気分転換になるだろう
「う、うん！行く」
扉が開き出てきた出久の顔は冷や汗で濡れており、表情も曇っていた。そんな出久の様子を知らないフリして出久と外へ向かった
……
緑谷side
結局、あの後眠れずじまいAさんが来る数分前、青山くんが僕の部屋の扉を隙間程度位に開け様子を見に来ていた
「緑谷くん。なんだったんだい？さっきの音は」
隣の部屋の青山くん。Aさん以上に音がはっきりと聞こえたのであろう
『あーえっと！！た、大したことじゃないから！』
そして外へと出て青山くんからのお叱りを受ける
「君、また溜め込んでない？チーズが足りなかったのかな！？」
『かもしれない……起こしてごめんよ〜』
その後、部屋に戻り、右腕を見てまた変な動悸が自身を縛り付けてきた。息を切らしていると、直後にAさんが来て今に至る
『(夢なのに鮮烈に覚えている……手と手が重なるその瞬間)』
ユメのオワリ、僕を見る先代達……
「出久？」
『え！？何？』
Aさんとランニングをしていた。夢のことをぼーっと考えていたためAさんの問いかけに反応が遅れる
「何度も呼んだのに返事がないから……」
『あ、あ！ごめん！』
その場に立ち止まる。後ろからは朝日が昇っていた
「何か気になることとかあるなら聞くよ？」
Aさんからの提案、ずっと聞こうと迷っていたのだろうけど聞かないでいてくれた。けれども、僕の様子があまりにもおかしかったためか聞き出すに至ったようだ
『いや……』
「私には話せないこと？」
『……』
Aさんは僕の個性のことやオールマイトとの関係の事は知っている。けれども変に巻き込みたくない
「……オールマイトに関わること？」
『！』
若干違うが、合っていた。ワン・フォー・オールの夢、歴代の継承者についてだ
「よく分からないけど、気になる事があるならオールマイトに聞きに行きなね」
「一人で解決できないことをうだうだ考えても仕方ないでしょ」とAさんは言った。確かにそうだ、僕じゃ先代について分からないし、これ以上考えても応えは出てこない
『うん、そうだね。オールマイトに聞こうと思う』
「そ」
Aさんは素っ気ない様子でそう返事した。けれども顔は温かい表情で僕を見て微笑んでいた
『(ありがとう。Aさん)』
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