消滅少女【第3章】 (ページ30)

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１０９話ページ30

「君は……君……誰でもない。君のものだ」

『……っ！』

そう初めて言ってくれたのは無希だった

『あの時、切島の手を取らなかった。でもまだ……っ！まだ間に合うんだよ！』

「……！」

まだ間に合う……あの時は取らなかったけど、俺が何度だって差し伸べる……！

お前が俺を守ろうとしてくれた。次は俺が……！

ヒーローにだってなれなくたったいい……このまま無希と逃げたって構わない……っ

だから……！

『やり直せれる！敵(ヴィラン)だとしても関係ない。お前は俺を巻き込まないようにするためあの日、記憶を消した！誰よりも優しくて……っ！ヒーローになれる！お前なら！やり直せるんだよ！！だからまた一緒に……「轟くん」』

俺の言葉を遮るように無希は優しい口調で俺の名前を呼んだ

「私と出会ってくれてありがとう」

『！……「私に手を差し伸べてくれてありがとう」何を……！』

無希は次々と言葉を並べていく

「一緒に帰ってくれて、話しかけてくれて、助けてくれて」

『助けられたのは俺で……！俺はお前のこと全然……助けられて……「ううん」』

「轟くんは助けてくれた……冷たかった心を、今まで貰えなかった温かさを……いっぱいくれた」

『！……』

何でだろうか……

すごく嫌な予感がした

『(あの日と……)』

あの人同じ光景なような気がして……

これ以上進めば

戻れないような気がして

「海に連れてってくれて、2人で抜け出して……『無希！』私を連れ出してくれて、花火を一緒に見てくれて……ありがとう……っ！」

『無希……っ』

ダメだ……これ以上はもう

お願いだ

行かないで

俺は一歩無希の方へと踏み出す

「ダメだよ」

その言葉に俺の足は止まる

『駄目って……』

「これが最後だから」

『最後って……っ！なんだよ！！』

最後なんて……もう嫌なんだよ

無希は俯いていた顔を上げ、俺を見て微笑んだ

とても穏やかに微笑んだのだ

そしてさっきまでは視界に入らなかった赤い本が見えた

『！……その本は……』

無希のお母さんの……

「これで最後、やり直そう」

『やり直そうって……』

無希はその本に何かを書き始めた

『無……「轟くん」！！』

「好きです。轟くん」

そう言って無希は笑った。とても幸せそうに

『無希！！』

無希がそう言った瞬間、空にはヒビが入り、まるでパズルだったかのように崩れ始めた