消滅少女【第3章】 (ページ29)

今日:3 hit、昨日:7 hit、合計:24,533 hit

１０８話ページ29

神様だって許してくれるはず

『(頑張ったよね……私)』

ね……？轟くん

青い月は悲しげに白い少女を照らしていた

……

轟side

無我夢中で走り続け、中学校へと着く、卒業してまだ1年も経っていないというのにとても懐かしく思えた

校内へ忍び込み、屋上へと続く階段をひたすら登る。足音だけが静まり返った校舎の中に響き渡る

この忍び込んだ場所も無希が教えてくれた場所、あの日も無希と一緒に学校裏のフェンスから忍び込んだ

『懐かしいな……』

無希と過ごした中学の思い出が蘇る

そして階段を登っていく、上へと続く階段が無くなった所に扉があった。少し古くなった扉だ

そして1度扉の前へ止まり、一呼吸つく

恐る恐る扉を開けばフェンスの前に無希がいた。一歩一歩と前へ進み、無希との距離が2mくらいになった

青い月に照らされてとても神秘的に思えた

『無希……』

名前を呼ぶ

「……」

ゆっくりと振り返る無希、会いたかった……その相手が今ここに居るのだ

何から話せばいい、話したいことは沢山あるのに声が震えて出てこない

すると無希から話し出した

「来てくれたんだ」

『当たり前だ』

お前が呼んだんだ。無希が呼ぶなら俺は何処へだって行く

この静まった空間に俺たちの声だけが響く。今、この世界には俺たちしかいないように思えた

「思い出したんだね」

『！……あぁ、思い出した。全て』

「そっか……」

切なそうに無希は言う。思い出してほしくなかったのか、それとも思い出してくれて嬉しかったのか、そんな入り混ざった表情に見えた

『……お前と、出会った時のことも、初めて名前を呼んでくれた時のことも、一緒に帰った時のことも……海に行った時、2人で学校を抜け出した時、お前が敵(ヴィラン)だって知ってしまった日のことも……あの最後の……！夏祭りで俺の記憶を消したお前が……っ！泣き笑いした時のことも！全て……っ！』

「……」

海に行った時、無希は言ってくれた

「綺麗……」

『海初めてか？』

「……うん」

少し離れた場所にある海岸……そこへ無希と来ていた

「……青い」

『あぁ』

海は青く……少し緑っぽいエメラルドのような色をしていた

「轟くんの……」

『？』

「左側と同じ」

『！……俺の左は……』

親父の色……大嫌いな俺の……そんな俺の左の頬を無希は包み込んだ

「私は……君のその色……綺麗だと思う」

『！』