消滅少女【第3章】 (ページ11)

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９０話ページ11

「……？」

俺が声をかけると先輩は俺の方を見た。透き通るような白い髪は夕日の色を吸収し、夕日色に少し染まっていて、黒く、どこまでも深い瞳に吸い込まれそうだった

『……』

「……」

無言が続く

『(いきなり話しかけたのが不味かったか)』

そう思ったその時

「……何も」

『！』

先輩の口から声が零れる

スっと入ってきたその声は落ち着いて、冷たく感じたが、嫌な冷たさではない、むしろ心地いい冷たさ、氷のようだった

『何も……してないんですか』

「……」

頷く先輩

『帰らないんですか』

「……」

次は何もアクションを起こさない

『……(もしかして)』

俺と同じ

『帰りたくないんですか』

「……」

またもや何もリアクションをしない

『……(変わった人だ)』

「分からない……」

『！』

「けど……君の言った通り……帰りたくないのかもしれない」

表情を一切変えずに言い切った先輩、ずっと遠くを見ていて、その横顔がとても綺麗に見えた

これが儚く、誰よりも白い先輩との始まりだった

……

翌日、昨日の先輩のことを調べれば、簡単に分かった。やはりひとつ上の先輩で名前は

『(無希……A先輩)』

白い髪で不思議な雰囲気を纏っている先輩を探すのは簡単だった。この特徴を言えば、誰でもみんなあの先輩のことを指したからだ

『いた』

探していた無希先輩がいた

『無希先輩』

俺は歩く無希先輩の腕を掴んだ

「……」

無希先輩はゆっくりと後ろを振り返り、俺の方を見る

『(まただ……)』

昨日と同じ、黒く、深い瞳が俺を映す。その瞳を見ていると全てを見透かされているような……そんな錯覚に陥る

『えっと……』

特に話すことが思い浮かばなかった。探したのだって何故だか分からない。ただ気になっただけなのだ

「……」

チャイムが鳴る

『……無希先輩、また昨日と同じ所に居ますか』

自然と零れた言葉

「……さぁ」

返事は来ないと思っていた。でも先輩はそう言って教室へと戻って行った

『……なんだ……この感じ』

心臓がバクバクと脈を打っていた……温かく……そしてもどかしい……そんな気持ちが……

……

放課後

『あいつは居るか……』

あの時の返事は「さぁ」来るのか来ないのか曖昧な返事だった

だが気になり、昨日と同じ少し遠回りして公園へと向かう

『無希は』

公園に着く、錆びたブランコの音がする

『居た……』