６８話 ページ29
「君のことはよく知ってるよ」
低く、冷たい声……どこか聞き覚えがある
「黒霧、こちらに飛ばしてくれ」
「はい」
そう言うと黒霧は私をさっきと同じように飛ばす、また飛ばされた後辺を見れば、暗かった
「やぁ、こんにちは」
奥の方からやってくる人影
『っ……』
悪意……今まで感じたことの無いような寒気、悪寒
「僕はオール・フォー・ワン」
『オール・フォー・ワン……』
聞いたことは無い……でも聞き覚えのあるような名前
「初めまして……今の君とは初めましてかな」
『今の君って……』
「記憶の君とは初めましてじゃない」
『！』
彼は記憶の私を知っている……記憶の私を知っている人間……初めて出会った
『貴方は……誰なの』
「そうだな……君の仲間とでも言おうか」
『仲間……』
嫌な予感しかしなかった
何かを失いそうな
そんな予感しか
「君のお父さん、お母さんも知っている」
『！』
私のお父さん……お母さん
「君はこちら側の人間だ」
『私は……っ』
私はヒーローに……相澤先生に恩を返せるように……轟くんと同じの……！
「可哀想に……記憶の君を呼び戻してあげるよ」
『嫌……嫌だ』
「そうなる運命なんだ。君は記憶の君が正しいんだよ」
『嫌だ……』
失いたくない
大切な何かを
そんな叫びは虚しくも消える
黒い光が私を包み込んだ。オール・フォー・ワン、彼が私に触れた瞬間
『っ！』
流れ出す情景
「失敗は許されない、分かってるなA」
『はい』
目の前に広がるの血溜まり
「よくやった、さすがだ。お前なら完璧な“
私は……
記憶が流れ出す
失われた記憶
『(あぁ……)』
私は……
『……』
「どうだい気分は」
『別に……』
「君がどういう人間だか分かっただろう？」
『……そうだね』
クスッと薄気味悪い笑みを浮かべた男
そしてなんの感情も持たない、冷たい、人形のように成り果てた白い少女……
「君の居るべき場所は分かったかい？」
『うん……私は……』
私が居るべき場所は“
全て……全て思い出した、お父さんのこともお母さんのことも、そして自分のことも……
『(轟くん……)』
私は彼に会っていた……そして私は彼のことを知っていたんだ。昔から
「新しい仲間も加わった」
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