30.愛弟子と電話の主 ページ32
それから。私達が探偵社から守りきったというのに、首領は自ら姿を消した。
しかも中也君まで戻ってきていない。
統率者が居なくなって、マフィア内はドタバタとしている。
…普通だったら姐様が指示を出す所なんでしょうが。
何も指示を出さない姐様。きっと、何か考えがあっての事だろう。
ならば私は。
『皆さん、とにかく一度落ち着いて下さい!首領は自ら此処を出て行かれたんですよ!それはきっと考えあっての事です!ですから慌てず、各々持ち場に戻って下さい!!』
私に出来る事をするまでだ。
そんな気持ちで私は声を掛けた。
すると部下達は一斉に返事をし、各々動き出した。先程までの喧騒が嘘のように。
紅「さすが、相談役じゃの」
『もう、茶化さないで下さいよ』
それまで黙っていた姐様は私にそう声を掛けた。
それに対し、私は少し不貞腐れた顔をする。
『姐様が何にも指示をしないから…』
紅「偶にはAも幹部クラスという事を思い出して欲しくてのぅ」
ふふふ、と上品に笑う姐様は矢張りとても美しくて。
不安が燻っていた私の心も次第に晴れていく感じがした。
と、同時に鳴り響く私の携帯。
…中也君かも。
そんな思いで携帯に出ればそれは違う相手からで。
『げぇ』
記される名前に思わずそう声を出してしまった。
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作者名:松並ゆの | 作成日時:2018年2月26日 23時