双黒の愛弟子さん【文豪ストレイドッグス】 (ページ30)

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28.愛弟子と中途半端ページ30

捕虜は逃がしてしまったけれど、何とか首領を、守りきる事は出来た。けれど…

紅「此の場所はバレてしまった。首領を避難させるぞ」

『避難ってなると、地下へですか?』

紅「そうじゃのう。彼処なら正面さえ守りきれば大丈夫じゃろう」

そう言うなり、姐様は部下達へ指示を出し、首領を地下部屋へと避難させた。

紅「私も持ち場につく。Aはどうするかえ?」

『私は……』

姐様に問われても直ぐに答えることが出来ない。

…矢張り私は中途半端だ。

でも。

『姐様や中也君の大切な此処を守りたい』

これだけは嘘じゃない。

姐様の目を見てそう伝えれば、姐様は優しく微笑んだ。

紅「その気持ちが有れば十分じゃ。ならAは正面を頼むぞ」

『はい!』

その言葉を皮切りに、私と姐様は其の場を離れた。

▽△

それから余り時間も経たないうちに、探偵社の人達はやって来た。

『矢張り1階は突破されましたか……梶井さんを呼んできて下さい』

「分かりました!」

正面入口の突破を部下に聞いた私は、椅子から腰を上げた。

……余り乗り気ではないけれど、此処は守りきらなければ。

と、そこで私はある人物に気がついた。

あの人は、中也君の部下の人。

彼は迫り来る探偵社を傍目に、電話をしている。

もしかして……

【浮雲】

(早く中原幹部に伝えなければ!!)

矢張り!!

私は異能を使い、その人物が誰に電話をしているかを確かめた。

すると予想通り中也君に連絡をしていて。

先程の件もありますが…

私は意を決して、その部下へと近づいた。

「申し訳ありません!突破されました!」

中〈1階が突破されたァ!?首領を死守しろ!俺もすぐ行く!〉

『来なくていいですよ』

「あ…相談役!?」

『御免なさい、少し貸して下さい』

驚く部下の手から、携帯を奪う様に取った私は、そのまま中也君に話しかけた。

中〈どういう意味だ、A〉

『そのままの意味ですよ。此処は私が出ます。だから中也君は直接首領の元へ行って下さい』

中〈……信じていいんだな〉

『勿論です。私は、私の大切なモノを守る為に戦います』

中〈……分かった。無理だけはすんなよ、A〉

『ふふ、分かってますよ』

そう言って私は携帯を切って、側に居る部下へ返した。

中也君と話した事によって、少し心がすっきりした気がした。

……約束を、したんだ。
此処は私が抑えなくては。

『さて。持ち直しますよ、皆さん』

迫り来る探偵社を目に、私は高らかにそう言った。