27.愛弟子と彼と姐様と ページ29
先に来ていた紅葉姐様と合流した私は、部屋の中を見渡した。
……矢張り私の予想通り。
谷崎潤一郎は首領の居るこの部屋を突き止めやって来ていた。
今正に、眠っている首領にナイフを振りかざそうとして、そしてｰｰｰ
『“止まれ”』
谷「なっ……!?」
『御免なさい』
紅「その男が死ねば私の忌む、昔のマフィアに逆戻りするでのう」
私の【浮雲】の言霊で体の動きを止め、紅葉姐様の【金色夜叉】で彼の胸を貫いた。
姐様の異能で貫かれた事により、私は言霊を消した。
きっともう起き上がりはしないだろうとふんで。
しかし彼は異能で姿を消し、今度は私達をも倒そうとした。けれど、
紅「姿は見えずとも、恐るべき殺気よ」
姐様の異能による攻撃にはかなわない。
……出来る事ならば、彼を傷つけたく無い。けど私はポートマフィアだから。
だからｰｰｰ
『もう“動かないで”』
谷「っ!?」
私の言霊により、また動きを封じられた彼に迫る刃。
……恨むのなら、恨んでいいから
彼がやられる所なんて見たくない。
だから私は目を瞑り、顔をそむけそして。
紅「っ鏡花!!」
そんな紅葉姐様の声で瞑っていた目を開いた。
『な、んで、鏡花ちゃんが、此処に……』
思わずそう呟いた私に、鏡花ちゃんは一瞥をくれると、そのまま目の前の紅葉姐様と対峙した。
泉「この建物は昔の庭。裏口も潜入経路も頭に入ってる」
そう鏡花ちゃんが言ったと同時に、姐様の部下が何人も入ってきた。
鏡花ちゃんは倒れている谷崎さんを異能力である【夜叉白雪】で引っ張り上げ、壁を破壊して外へと飛び降りた。
泉「出来ればこんな形で会いたくなかった」
飛び降りる直前、私の方を見た鏡花ちゃんは静かにそう告げた。
『鏡花ちゃん………』
そうして姐様の部下が一斉に、鏡花ちゃん達に向かって銃を乱射するが、姐様の「やめよ」の言葉でそれを収めた。
……矢張り姐様も鏡花ちゃんの事は大切なんだ
ちらりと様子を伺えば、姐様は何とも言えない表情をしていた。
きっと、私も変わらない顔をしているんだろうな。
そう、自然と思ってしまう自分がいた。
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作者名：松並ゆの | 作成日時：2018年2月26日 23時
