2.愛弟子と探し人 ページ3
国木田さんに注意という名のお叱りを受け、江戸川さんは退散した。
それはもう、面倒事は御免だという位には速かった。
光の速度並だった。
そうして私は泣く泣く散らかしたごみを片付けた。
……国木田さんという名の監視付きで。
ちらりと時計を見上げると、私がここに来てすでに1時間は経とうとしていた。
『あの、太宰……さんはいつお戻りになられるんですか?』
国「普通に帰ってくれば10分の距離だが、あの唐変木の事だ、また入水か何かしているんだろう」
『あぁ……』
この人、苦労人だなとすぐに思った私は天才だと思う。
『とういか、入水なら助けに行かなくていいんですか?』
国「大丈夫だろう、今日は小僧も一緒についてるからな」
『小僧……』
ぽつりと国木田さんの言葉を反芻してみるけれど、それが誰のことかはわからない。
まぁ興味はそんなにないからいいけれど。
でも、入水しているとなればまだまだ現れない可能性は高い。
折角の休みの日を人を待つだけの1日にはしたくはない。
『彼が来ないのならば、また出直してきますね』
そう言って私は座っていた椅子から腰を上げた。
国「そうか、すまないな。来ていたことはあの唐変木に伝えておく」
『そうしていただけると助かります 』
私は軽くお辞儀をして、応接室を出た。
事務所にいるのは、国木田さんと江戸川さん、それに紅茶を運んできてくれた蝶々の髪飾りをつけた綺麗な女性ーー与謝野晶子さんの3人だった。
私は扉の前に行き、ふわりと後ろを振り向いた。
『では、太宰……さんにAが会いに来たと伝言をお願いします。
後、美味しいお茶菓子を有難う御座いました。
では、また何れお会いしましょう。
………国木田さん、江戸川さん、与謝野さん』
国「なっ!何で名前を……」
目を見開く国木田さん、黙ったままこちらを見つめる江戸川さん、意味深な目を向ける与謝野さん。
まさにこれぞ三者三様。
まぁ、3人とも名前を名乗っていないのに、私が知っていることに驚いたのだろう。
私はそんな彼等にくすりと1つ微笑んで、優雅に御辞儀をして踵を返した。
『それでは、失礼します』
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作者名:松並ゆの | 作成日時:2018年2月26日 23時