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自分が惨めで仕方がなかった。
仕事を私用で休むことはもちろん許されない。
でも、だからと言ってAを傷つけていいわけなんて、そんなことは絶対にない。
ご飯の上に置かれたAからの手紙をポケットに入れると、足は自然と寝室の方へ向かっていた。
「 …A? 」
しっかりと僕の分まで空いたベッドで、Aは静かに眠っていた。
「 …A?ごめん、ごめんね、A… 」
頬をそっと撫でると、ピクっとAの肩が動いた。
「 …起きてるの? 」
『 …ん、おかえり。 』
「 ……ただいま。 」
『 お仕事お疲れ様。 』
「 うん、ありがとう。 」
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「 A、僕、Aに謝らないと。 」
『 …どうして? 』
「 ……全部、全部鶴崎から聞いた。 」
『 ………そっか。 』
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《 Aちゃんさ、『 颯との記念日がもうちょっとで、颯もその日は仕事がないから、一緒に指輪見に行こうって約束してるんです! 』ってめちゃくちゃ喜んでてさ。 》
「 …は?…指輪……? 」
《 お前もしかして忘れてたの? 》
そうだ、そうだった。
最近仕事が忙しい事や、東大王でもプレッシャーをかけられていたストレスで、忘れていた。
そんな大事なこと忘れるなんて、何やってるんだ。
Aがここまで今日にこだわった理由。
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『 ねぇ颯、記念日を指輪の裏に彫れるのがあるんだって! 』
「 へぇ、ロマンチックだね。 」
『 私もこんなの憧れるなぁ。 』
「 …じゃあ次の記念日の日、僕ちょうど仕事休みなんだよね、買いに行こうか。 」
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「 次の記念日に買いに行こう 」と、自分からそんな大口を叩いておいて忘れるなんて、そんな事があっていいのか。
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『 お仕事だもん。我儘言ってごめんね。 』
「 違う、違うよA。悪いのは僕で…… 」
『 …私、颯のお仕事してる姿好きだから。 』
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「 …A、ちょっとこっち来て。 」
『 ん? 』
ベッドに入ったままだったAを無理やり連れ出して、リビングのソファに2人で座った。
「 …A、本当に… 」
『 もう、何回謝るの?私は大丈夫だってば(笑) 』
「 でも、こんなにAを傷付けて、彼氏失格だ… 」
『 そんな事ないよ、私はいつも感謝してる。颯に出会えて、私を選んでくれてありがとうっていつも思ってるよ。』
そう言って、Aは僕の手をぎゅっと握った。
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アルコン型(プロフ) - こんばんは!いつも楽しく読ませて頂いています(*^-^*)最高の作品ばかりで何度も読み返しています。厚かましいとは思いますが、リクエストしても大丈夫でしょうか?(´・ω・`) (2019年12月29日 22時) (レス) id: 7d2d99b638 (このIDを非表示/違反報告)
サツラ(プロフ) - Rika1722さん» うわー、嬉しいです( ; ; )素敵な夢が見られるような小説が書けていたら幸いです!! (2019年9月12日 15時) (レス) id: e4eef8aaeb (このIDを非表示/違反報告)
Rika1722(プロフ) - 最高です…。寝る前に読ませていただいています!いい夢が見れる気がして笑 (2019年9月12日 0時) (レス) id: a257df45f5 (このIDを非表示/違反報告)
サツラ(プロフ) - まっちゃさん» 嬉しいです(>_<)ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 23時) (レス) id: e4eef8aaeb (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - 短編集も最高ですっ!これからも楽しみにしてます(^^) (2019年9月6日 21時) (レス) id: 6d7b57be72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サツラ | 作成日時:2019年9月5日 22時