0ヶ月記念日__mzkm. ページ29
( mizukami side. )
『 もういい!!颯なんて嫌い!! 』
僕の彼女のそんな声が響き渡ったのは、朝起きてまだ間もない時だった。
「 いいよ、僕もそんな我儘なA嫌いだから。 」
下唇を噛んで少し涙目な彼女を目の前に、歯磨きをしながらそんな冷たい言葉を突きつけた。
喧嘩の元となったのは、僕達の記念日の話。
・
朝にAの声で起きて、重い瞼を開けると目の前には既に着替えているAがいた。
「 …ん、なに…?今日何かあった…? 」
『 何言ってるの、今日記念日だからお出かけしようって言ってたでしょ! 』
「 …今日僕仕事なんだけど、撮影。 」
『 …え…颯、今日は仕事ないって言ったじゃん。 』
「 言ってなかったっけ?出演者の都合で日程ずれたの、ごめん。 」
『 なんで?早く言ってよそんな… 』
「 だからごめんって、また埋め合わせするから。 」
ベッドから降りて洗面台へ向かうと、後ろにグイッと引っ張られる感覚で少し体がよろけた。
「 離して、僕急がないとだから。 」
『 今日じゃないと意味ないの… 』
「 なんで?そんな今日にこだわらなくてもいいじゃん。 」
『 …なんでそんな事軽く言えるの?颯は記念日大事じゃないの? 』
「 そんな事言ってない。だから今度埋め合わせするって言ってるじゃん。とりあえず離して。 」
僕の服の裾を掴むAをズルズルと引きずりながら、やっとの思いでたどり着いた洗面台のコップに立てかかっている青い歯ブラシに手をかけた。
今まで、何度も記念日をお祝いしたことはあったけど、僕の仕事の都合で当日に祝えたことは一度もなかった。
だけど、「 仕事があるからごめん 」と言うと、『 ううん、お仕事は仕方ないよ、頑張ってね 』と、いつも笑顔で送り出してくれていたから。
いつも仕事を応援してくれていたAがここまで我儘を言うのは珍しいくらい。
『 ねぇ、今日のお仕事は絶対なの? 』
「 当たり前でしょ、仕事舐めてるの? 」
『 …っそんな言い方… 』
「 あのね、仕事はこれからの人生がかかること以外は休んだらだめなの。体調が悪くても僕は出るし、周りに気付かれないようにもする。それなのに、彼女との記念日です〜って休めると思う? 」
『 …そんな事、分かってる… 』
「 じゃあもうそろそろ離してくれない? 」
・
…で、今に至る、ってわけ。
・
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アルコン型(プロフ) - こんばんは!いつも楽しく読ませて頂いています(*^-^*)最高の作品ばかりで何度も読み返しています。厚かましいとは思いますが、リクエストしても大丈夫でしょうか?(´・ω・`) (2019年12月29日 22時) (レス) id: 7d2d99b638 (このIDを非表示/違反報告)
サツラ(プロフ) - Rika1722さん» うわー、嬉しいです( ; ; )素敵な夢が見られるような小説が書けていたら幸いです!! (2019年9月12日 15時) (レス) id: e4eef8aaeb (このIDを非表示/違反報告)
Rika1722(プロフ) - 最高です…。寝る前に読ませていただいています!いい夢が見れる気がして笑 (2019年9月12日 0時) (レス) id: a257df45f5 (このIDを非表示/違反報告)
サツラ(プロフ) - まっちゃさん» 嬉しいです(>_<)ありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2019年9月8日 23時) (レス) id: e4eef8aaeb (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - 短編集も最高ですっ!これからも楽しみにしてます(^^) (2019年9月6日 21時) (レス) id: 6d7b57be72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サツラ | 作成日時:2019年9月5日 22時