【WT】ずっとお慕いしております【shk】 (ページ38)

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第三十六話ページ38

私の家は代々、護衛を生業としている家だった。父は跡を継ぐ為に士官学校に通っている時に、きんときの父と意気投合し、そのままバディを組むほどまでに仲良くなった。

後に父の家が護衛業をしている家系だと分かると、きんときの父は当主になった暁に自分の家に専属で護衛を頼む、という約束を交わした。
その約束通り、私が産まれる前にきんときの家を主とした護衛業を父は行った。

ある、酒を飲んでいた日の事だ。私達がもうすぐ生まれる頃。父は女だからと貶すような人ではなかったが、家を継ぐには男の方が有利だと言うことを話した。母は身体が弱く、一人を産むだけで精一杯だったからだ。

するときんときの父は言った。

「じゃあ、俺の子供が息子でお前の子供が娘だったら結婚させるのはどうだ？そうじゃなくとも護衛には欲しい」

と。きんときの父は、父の職業に憧れを抱いていたが貴族の直系の長男に当たるため、当主になるしか無かった。だが息子に、その夢を叶えて欲しいという魂胆だったと言う。

酔っていたのか父はその提案に乗り、生まれてきた子供は父の家は女、きんときの家は男だった。

幸い、二人とも正気だったので

「20歳を過ぎるまで家を出なかったら結婚させよう」

とお互いに縛りをつけた。

結果として私達は20になる前に家を出たので親の口約束は無効となった。

『因みに私は家業には特に不満もありませんでしたので、彼とは別の士官学校に通いながら父に稽古をつけてもらっていました。ですので、一時期はきんときの護衛をしていましたよ。』

妙に給仕に理解があったのはこういう事か、と誰かが呟いた。

kn「だから俺とAは昔からの知り合いでこんな風に話せるんだよね」

『業務時間外だけね』

ずっと立っておくのが辛いので、今はきんときの腕に掴まって話している。有給はたっぷりあるから、少しの間実家に戻って療養でもした方がいいのかな、と思う。

けれどまだ、彼には伝えないといけない。

『あとね、きんとき』

kn「なに？」

『…私ね、好きな人が出来たの。』

風だけが吹く中庭は心地よい。きんときは一瞬目を見開いて、いつもみたいに微笑んだ。

kn「そっか。…そっかあ、そっちの方が俺も区切りがつくから、いいのかな。」

『ごめんね。』

悲しいのはきんときのはずだ。なのに、それなのに、何故こんなにも悲しいのだろう。

『…ごめんね。』

kn「大丈夫、泣かないで。」

嗚咽は出ないのに、何故か涙は止まらなかった。