【WT】ずっとお慕いしております【shk】 (ページ21)

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第十九話ページ21

結局あの後、殆どと言っていいほど眠ることが出来なかった。しかし、今の私はとても目が冴えている。

『…顔だけはいいんだよ、彼』

長年見てきて分かったこと。きんときは顔がいい。しかも正統派で、何処ぞの王子と言われても納得する程だ。
そんな人の隣に立つと改めて考えて、ため息しか出てこない。

『もう、これでいいや』

以前、仲良くなった侍女と出掛ける際に選んでもらった服を着る。
首までの黒いノースリーブシャツに赤色のシフォンブラウス、白色の所々花の刺繍があるギャザー飾りスカート。靴は赤色のパンプスで黒色の刺繍があるものだ。選んでもらったが着る機会が無かったので、今日が丁度使い時だろう。
バッグに必要な物を入れて携帯の時間を確認する。8:45と表示されており、少し早いが出た方がいいだろうと自室を出る。

「おや、お出掛けですか？」

行く途中、仕事をしているメイド長に出会った。だが、多分これは休んでいてもすることが無いからやっているのだろうと自己解決をする。

『はい。誘われましたので。』

「楽しんできなさいね。」

『分かっております。』

相手も今日何するかも分かっていて聞いてこない辺り、やはりメイド長はメイド長なんだなと思う。

正門前、まだ来ていないだろうと思っていたのだが、男である門番も見惚れるほどのイケメンがそこにはいた。そしてそのイケメンは、私を見た途端に笑いかけた。

『…早くない？』

kn「丁度今来た所。その格好、似合ってる。可愛いじゃん。」

『それはどうも。』

こういう気遣いが多分、彼がモテる秘訣なんだろうなと思う。

kn「じゃあ行こうか」

手を差し出されて、何をすればいいか首を傾げる。分かったのか、彼は笑いながら説明をし始めた。

kn「今日一応デートじゃん？だから手、繋ごうよ」

『デートってそういうものなんだ』

ならば、と彼の手に自分の手を重ねる。やはり男だから私よりも大きい。

kn「んじゃ、行こうか」

そこから指を絡ませて歩き出した。これが所謂、恋人繋ぎと言うものなんだろうか。

『恋人繋ぎする必要はあったの？』

kn「Aは嫌？」

『嫌、という訳ではないけど…』

kn「なら良かった。嫌なら言ってね。」

『分かった』

別に嫌ではないのだ。彼と手を繋ぐことは。ただ、関わりすぎていてただの友人にしか思えないだけだ。多分。

kn「じゃあ、取り敢えず国出ようか。」

『…は？』

考え事をしている時に言われたその言葉は思考を止めるには十分だった。