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『男子校に女子が1人だけで他に選択肢がないから珍しいだけだよ』
「んなことないって。伸ばしたらもっと可愛いって」
『そういうのやめて』
「ちぇっ。髪が長い監督生絶対に可愛いからオレが見たいのに」
口調を強めるとエースは唇を尖らせ、いつものように頭の後ろで手を組んで不貞腐れるけど、視線は私から逸らさない。
その赤い瞳に射抜かれた私の心臓の鼓動は早い。
「んじゃ、今度オレだけに見せてよ。他の奴らには内緒でさ。ね、A」
ヴィル先輩に頼んでウィッグ借りてこよ、と私が頷いてもないのにエースは勝手に決めてしまう。
ああ……だからエースのことが苦手だったのに。
その強引なところも最初は苦手だったのに、同じ時を過ごしていく内に、今ではそんなところも彼の魅力にしか見えない。
いつもは私を監督生と呼ぶのに、こうしていきなり名前で呼ぶ彼は卑怯だ。
もう恋なんてしないと決めたのに。
私の決意は脆く崩れていき、また落ちていこうとしている。
もう一度だけ、信じたいと思っている自分がいた。
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作者名：ここ
| 作成日時：2021年8月3日 13時
