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◇
ズズッ。鼻を啜る私にティッシュを渡すとグリムは深いため息を吐いた。
「…………オレ様は人間の恋愛感情はよくわからねーけど、オメーがバカだってことはわかるんだゾ」
『私が……バカ？』
渡されたティッシュで鼻をかむ私にグリムは呆れたような視線を向ける。
私がバカ、それはどういう意味。
「大バカじゃねーか。なんで好きなヤツと離れないといけないんだゾ？ 今でもアイツのこと好きなんだろ？」
『好、き……っ。エースが好き……っ』
「それならアイツの前でそう言ってやればいいだゾ。そしたらエースの機嫌も直って解決だゾ」
『でも……私別れようって言ったのに……』
「エースは絶対に別れないって言ったんだろ？」
そう。
図書館で別れを告げたあの日、エースは私にそう言った。
「好き同士なのに離れようとするのがおかしーんだ。魔物は1度番になると絶対に離れないんだゾ。くっついたり離れたりするのは人間くらいなもんだ」
『人間と魔物を一緒にされるとちょっと……』
「せっかく人が慰めてやってんのに、その言い方はなんなんだゾ！？」
『……ははっ。ごめん、ごめん。ありがとう、グリム。グリムのおかげで元気が出たよ』
「フン。辛気くせー顔をしてる子分を見てるのは鬱陶しいからな。元気が出たんならさっさとエースに謝ってくるんだゾ」
『……うん』
エースに謝ろう。
私の気持ちを伝えよう。
離れたくない
これからもずっと一緒にいたい
大好きだよって伝えよう。
目尻に溜まった涙を袖で拭う。
この時間なら寮に戻ってるかもしれない。
『グリム、行ってくるね』
「おう」
「おや、どこに行くんですか？」
談話室を出ようとする私の背後から突然聞こえた学園長の声。
『がく、えんちょう……』
「こんばんは、お邪魔しますよ。Aさんにお知らせがあるんです」
『お知らせ……？』
何故だろう。
学園長の話を聞いてはいけない、頭の中で警鐘が鳴る。
「おめでとうございます、帰る方法が見つかりましたよ」
本来なら喜ばしいことなのに、私にはそれは絶望への宣告のように感じた。
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作者名：ここ
| 作成日時：2021年8月3日 13時
