会へらくもおのづから・2 ページ34
*
「うーす」
運動部らしい返事。一気にわたしの緊張は高まる。悟られないようにそっと深呼吸をしていると、その人は迷わずに店の棚を覗いた。
「えーと、」
彼が言い終わる前に、わたしは何故か声をかけていた。
「白あんもなか、3個入り。ですよね」
「おっ」
彼は驚いたように顔を上げて、ニヤリと笑った。こちらもちょっと嬉しくなる。
「分かってんじゃん」
「常連さん、ですから」
「ようやく俺も常連入りか。長えなー」
「もう随分前からですよ」
「なんだ」
ケラケラと笑いながら財布を出す彼に、わたしもクスリと笑ってしゃがみこみ、白あんもなかの箱を出す。
彼の名前は知らない。けれど、制服から考えるに、多分近所にある伊達工業高校。
学年章からみて三年生。時々部活帰りらしいジャージを着ていて、友達のお兄さんにいたけどバレー部。……と、いうことまではわたしが一方的に知っている。
そこまで熱心に考えてひょっとして、なんて思われるかもしれないが、ただの興味だ。わたしが手伝うようになって知ったこと、気になることは、毎週のように欠かさず彼が白あんのもなかを買いにくることだった。
勿論高校生のお客さんなんてほとんどいない。最年少はおばあちゃんへのお見舞いを買っていく小学生のみこちゃんだけど、まあそれは置いておいて。
多分毎回自分用に買っていくんだろう。だから、だから、うちの店のを気に入ってずっと買ってくれているんだと思うと嬉しくなる。
――なんて、本当にわたしの一方的な思いだけれど。
「はい」
代金を受け取って、お釣りを渡して、そして、箱の入った紙袋を渡す。
「いつもありがとうございます」
渡す時にちょっと笑ってみたりなんかして。そうすれば、彼も笑ってくれるから。
「サンキュ」
お互いが、お互いのことを知るようになるのは、たぶん――もうちょっとだけ先の話。
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プロローグになります。
鎌ちとこの和菓子の女の子の話を書きたいなあ色々エピソード入れたいなあ、と短編の、短編(ここ重要)の構想を練っていたらなんか……。
なんか中編になりそうなんです(白目)
というわけで無理矢理にでも短編派生にしようと思って、短いですがプロローグ的な意図で載せました。
中編を作成する際には是非よろしくお願いします。あと少しだけ先ですが。
(6.30追記:中編できましたー。説明文からどうぞ!)
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - ★マチャキ★さん» 好きだったらだいたい書いてますよー。 (2016年7月20日 19時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
★マチャキ★ - 照ちゃんあった!! (2016年7月19日 20時) (レス) id: a549331ee4 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» そしてお察しの通り、及川さん大好きです。色々書きたくなるので、最初と最後に入れてるだけなんですけどね。前作も前々作も読んでくださってありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» コメントありがとうございます!とんでもない、長文コメント最高に嬉しいです…!!私も実は「この続き書きたいなぁ」なんて毎回思ってまして、うーん……したい、ですねぇ……(笑) (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
彗華@京都へ行きたい (元:凰華)(プロフ) - 前作、前々作を見て思ったのですが【及川さんで始まり及川さんで終わる】というループみたいなものが出来ているように感じました。作者様は及川さんが好きなのでしょうか?更新頑張ってください。応援しています!(長くなってしまいすみません) (2016年4月17日 22時) (レス) id: 4e64820097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年4月14日 18時