【照島遊児】笑えばいいよ・1 ページ10
*
「あっ! いたいた、A!」
明るいその声に私の心臓はたちまち跳ねる。動揺を隠すためにすっと息を吸って、「はいっ」言いながら振り向いた。
昼休みの廊下で私を呼んだのは、私がマネージャーを務めるサッカー部の先輩。いつでも明るくて、後輩からも慕われている人だ。
「っ、先輩、どうしましたか?」
「さっきから探してたんだよ。コレ、練習時間のプリント。昨日のミーティングにA出れなかっただろ? だから渡そうと思って」
「ああ! ありがとうございます!」
「どーいたしまして。じゃあ、今日も放課後頑張ろうな」
ぽん、と自然な仕草で私の頭を撫でてから、先輩は行ってしまう。
……撫でられちゃった。優しい掌の感覚を忘れたくなくて自分の手を頭にやろうとすると、手首が不意に掴まれた。――え?
「何? 今のヤツ」
「て、照島……」
照島遊児。最近、私によくちょっかいをかけてくるクラスメート。染めた頭と舌ピアスは目立っていて、実際見た目通りにチャラい。
また今日もこんなところで話しかけてくるなんて、と少し呆れながらも私は言った。
「別に。サッカー部の先輩だよ、部活のもの渡しに来てくれただけ」
「へー? それにしちゃ随分喜んでんな」
「誰が! そんなんじゃないし」
ニヤニヤ笑う照島が掴んでいた手首を離すので、すかさず抜け出した。全くコイツは本当にわからない。
私をからかうのが、そんなに面白いのか。
「Aもよくやるよなー。マネージャーってそんなに楽しい?」
「失礼なこと言わないで。そっちだって華先輩っていうマネージャーがいるでしょ」
「え、お前華さんと知り合い?」
「去年委員会が一緒だったの」
ぶっきらぼうに告げると、照島は「へー」と興味があるのかないのか曖昧な返事。
華先輩、凄く優しくて美人で面倒を見てくれるいい先輩なのに。絶対あんた、いやあんたら迷惑かけてるんでしょ。
どちらにせよ、と話しながら教室に足を向ける。よせばいいのに照島はついてくる。……まあ、クラス一緒だから仕方ないのか。
「真剣にやってる人のことを笑うの、私大嫌いだから」
真面目に言ったのに、照島は「ふーん」やっぱり気のない返事をした。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - ★マチャキ★さん» 好きだったらだいたい書いてますよー。 (2016年7月20日 19時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
★マチャキ★ - 照ちゃんあった!! (2016年7月19日 20時) (レス) id: a549331ee4 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» そしてお察しの通り、及川さん大好きです。色々書きたくなるので、最初と最後に入れてるだけなんですけどね。前作も前々作も読んでくださってありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» コメントありがとうございます!とんでもない、長文コメント最高に嬉しいです…!!私も実は「この続き書きたいなぁ」なんて毎回思ってまして、うーん……したい、ですねぇ……(笑) (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
彗華@京都へ行きたい (元:凰華)(プロフ) - 前作、前々作を見て思ったのですが【及川さんで始まり及川さんで終わる】というループみたいなものが出来ているように感じました。作者様は及川さんが好きなのでしょうか?更新頑張ってください。応援しています!(長くなってしまいすみません) (2016年4月17日 22時) (レス) id: 4e64820097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年4月14日 18時