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「3人ともシャワー?」
「そうっす。秦野さんは今終わったとこですか?」
「うん、そう。」
そう軽々しく嘘をつくが本当は数分前であり、しばらくの間ここで聞き耳を立てていたのだ。
気を使ってなのか山本が話を広げてくれたが、
山崎の目に見えた動揺をなかったことに出来るはずもなく、
秦野は山崎のことが気になって仕方なかった。
だが、山本の問に対し 今終わったとこ と返したためか嘘ではあるが、山崎の動揺は少し薄れ話を聞かれていないと安心したようにも思えた。
すると重い口を開けて、山崎が 秦野さん と名前を呼ぶ。
「話聞いてました?」
「内容は聞こえなかったけど」
「そう、なんすね」
聞こえていなかったとは言ったもののまだ信用していないのか、少しだけ歯切れの悪い相槌を打つ山崎。
そんな空気感に耐えかね秦野は、じゃあまた明日 と言い、3人が出てきたロッカールームへ向かおうと山崎の左横を通ったとき山崎に右腕を掴まれる。
急なことに秦野は少し驚いたが、
振り向いて山崎に目を合わせると、秦野には目を合わさず宮城や山本を見たりと目を泳がしていた。
「このあと俺らで飲むんすけど、秦野さん時間あります?」
「今日なら大丈夫だけど、」
「あざす」
そう返答すると山崎はすぐに掴んでいた秦野の腕を離し、すみません急に掴んじゃって と軽く謝ってきた。
別にええよ と秦野が微笑みながら返すと、山崎はいつもの愛嬌のある笑顔に戻っておりニコニコとこちらを見つめていた。
「じゃあ追って後で連絡するんで」
そうすると3人は秦野と軽く会釈しシャワールームへと向かって歩いて行った。
秦野はというと3人の姿が見えなくなるまで廊下で眺めており、しばらくするとロッカールームへ入り、荷物を片付けたりと帰宅準備をしていた。
一人で黙々と作業をしている中、
結局ただ飲みに誘うだけだったのに、なぜ山崎があんなに動揺していたのかが気になった。
そんなに話しにくい先輩だっただろうか、
だが山崎とは先輩としてもチームメートとしてもかなり仲がいい自信があるし、それはないだろうと一人で考える。
そうなるとやはり会話を聞いてしまったことがまずかったのかと、
一人考え込んでしまい作業に集中できなかったのだった。
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作者名:浪人生 | 作成日時:2024年3月19日 20時