気づくまで先輩で (ページ1)

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＃1 好きなタイプページ1

2月上旬、まだ冷たさも残る風と共に春の匂いを感じ、今年も春季キャンプが始まったと実感する。

一昨年に続き昨年もリーグ優勝を果たしたこともあってか、
少し前のオリックス・バファローズ暗黒期とは裏腹に宮崎のキャンプ地は老若男女多種多様のファンたちで溢れ返っていた。

昔ながらの中年や年配の男性ファンだけでなく、
最近は若い女性ファンも増えはじめていた。
その理由の一つとして挙げられるのは、やはり選手層の若さなのだろう。

だが、中でも一番大きな要因でもあるのがオリックス選手の''顔''だ。

そして現在進行形で、すぐ近くにあるファンたちが見学できるエリアの前列にはフェンス越しに若い女性が大勢押しかけている。

ということはそろそろオリックスの顔の誰かが来る頃なのだろうかなんて考えていると、
後ろ側から一段と黄色い声援が秦野の耳へ響いた。

「だーれだ」

すると突然視界が暗くなり、
背後から大きく厚い手が自身の目元を覆うように視界を阻んできたのだ。

この黄色い声援と声からして、誰なのかは一目瞭然であり、秦野は少し微笑みながらすぐに答えを出す。

「颯一でしょ」

「せーかい」

するとすぐに秦野の顔から手を降ろす。

そして秦野が久々の彩りに目を萎ませながらも、
体を反転させ背後にいる山崎に顔を合わせる。

自分よりも遥かに背の高い山崎を見上げると、
そこには秦野の目に映っていた景色よりも眩しい山崎の金色の髪の毛があり思わずまた目を瞑ってしまう。

そんな秦野を見て山崎は、''なにしてんすか笑'' と笑いながら、女性を虜にするあの笑顔で愛くるしいえくぼをみせる。

「眩しいって、髪」

そう言いながら帽子を被るよう山崎に催促する。

そんな秦野を見て山崎ははいはいとニヤニヤ笑いながらも前髪をかき揚げしっかりと帽子を被る。

そんな山崎の一つの動作ですら後ろの女性ファンの歓声は高まるばかり。