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"幡ヶ谷さんへ

勝手に紙とシャーペン使ってすまん。
5時限目に遅れんようにな

北"

その綺麗な字に、私は目が逸らせなくなった。
白い紙に入っている薄い線が、私が没にした曲で使用した五線譜の紙だと分かる。
字が綺麗だから尚更、その線が目立ってしまう。

私が寝ていた際だろう。
置き手紙に紙とシャーペンを使ったことをこの手紙を経由して謝罪している。
何処まで律儀な人なんだろうか。

「……マジか。……私の、命日なんじゃん??」

寧ろ、あんな美人さんに私のシャーペンや紙を使っていただいたことを光栄に思いますがね!?!?
もうウェルカムですよ。
仕舞いには、自分の命日だという事を途端に理解してしまう。

北さんセコムに暗殺されんじゃんッッ!!!!
ごめんね♡
これを知ったキミ達の顔を見ると可哀想(ざまぁみろ)だから言わないであげるね♡←
いや、言うつもりないけども!!!

一生私だけの家宝にするもんねッ♡←

そして私の視線は、その隣に置いてあった二つのおにぎりに向いた。
もう作ってから大分経ってるだろうに、触るとまだ温かく感じられた。
自然と、胸が熱くなって、目元も熱くなった。

私は包んでいたラップを剥がすと、一口食べてみる。

「美味い…!!」

そのおにぎりは塩加減が絶妙で、それにこれいつ作ったんだろうって疑うくらい温かい。
自分の舌に特別自信がある訳ではない。寧ろ私は味覚音痴とまで言われる程舌が駄目である。

けど、それでもこのおにぎりが、
人生で食べてきたもので一番美味しく感じられた。

お店であってもいいくらい、美味い。
胸が、熱い。
目元が、熱い。

美味しい。
なにかに包み込まれてるみたいで、暖かい。

「……あったかい、…なぁ…」

目から、透明な滴が零れ落ちる。
それは世に言う涙で、全てを包み込んで受け入れてくれる、そんな北さんの暖かさに触れた気がした。

その触れた手が、暖かさを知ってしまった。
もう、その暖かさから手を離す事を
私は知らずにいる。

ただ、ひたすらその純粋な全てに堕ちていく。



治「あ、…ツムに言い返した、田中さんやっけ」

教室に戻るなり、宮侑の片割れ、宮治に名前を間違えられる始末。
いや、お前一文字としてあってねぇし。

「誰が田中やねん。私は幡ヶ谷ですね」
治「あー…佐藤さんか」
「いや、話きけ」

角名「佐藤さんじゃん。遅かったね」
「なになに??これは私に対しての新種のイジメかなにかかな??」

角名くん。キミはさっきまで普通に呼んでたよね??



そう返して、私は席についた。

ep.3「馬車馬のように働け」→←▼



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真弓(プロフ) - 本日初めてお話を拝見させて頂いた者です!とても面白かったです!更新楽しみにしています! (2020年8月5日 15時) (レス) id: 9bc8ccf67a (このIDを非表示/違反報告)
りこぴん(プロフ) - 佐久草ではなく、佐久早だと思います。 (2020年6月30日 19時) (レス) id: f964e58a5c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チェスト | 作成日時:2020年5月17日 22時

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