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この日で、一週間。
うちの部には、マネージャーが二人"居た"。
一人は一年の可愛くて小柄な美田(ミタ)凛ちゃん。
入ってきた時は、もうマジで死ねるかと思ったくらい素敵だった。
その場にいる皆んなが見惚れた。
可愛くて、文武両道で、性格も誰にでも優しいから男女問わず人気だ。
そしてもう一人のマネージャーの三年の流山A。
写真が大好きで、一日一回は必ずと言っていいほど、写真を撮る姿を見かけた。
だが、そんな彼女を見る者はもう、居ない。
いつも笑っていた彼女は、もう笑わなくなった。
いつも無表情で、いつも何処か別のところ見ていて、なにに対しても興味が湧かないのか、ボーッとしている。
彼女お馴染みの一眼レフのカメラを見る者はもう居ないし、声も、笑顔も見ていない。
授業中、当てられても、なにも言わず、ボーッと立っているだけ。
小さなSOSを、誰も拾ってくれない。
ある日、異変が起きる。
それはもう直ぐ、五月中旬に差し掛かろうとしていた時期だった。
__…バシッ
乾いた音が、体育館前の水道場で響いた。
それは三年の流山が、凛ちゃんの頬を叩いた音。
要するに平手打ち。
部員達は、その時、流山を酷く責めた。
「見損なった」「最低」「もう来んな」「辞めちまえ」「いつもいつも凛にばっかり仕事押し付けてるって思ってたら次はビンタかよ」「ふざけるのも大概にしろよ」
多くの者が彼女を批判した。
助け舟なんてものはなく、バレー部の皆んなが彼女を敵視、軽蔑した。
彼女が後輩のマネージャーを叩いたとして、主将である及川が監督とコーチに訴えかけ、流山Aは一週間の間部活動停止になった。
「(責められても、辞めろと言われても、
逃げ出す勇気はない。
ここで逃げ出したら、私は、臆病者だ)」
彼女は、確かめる様に、廊下を歩く。
踏み締める。
あの日の、鮮明に覚えている二年前のことだけが、唯一の幸せで、もうその幸せを戻せはしないけど、それでもいい。
彼らの近くに居られるならそれで、
そう思っていた次の瞬間彼女の精神が崩れ落ちた。
「あ……あ……あ…」
彼らが珍しく欲しいと言ってくれたから、焼き増しして、渡した写真。
三年の五人で撮った、私の一番のお気に入り。
皆んなで笑い合ってるその写真が、
下駄箱前のゴミ箱に、
引き裂かれた様に、何枚も破かれて捨てられていた。
つまり、それが彼らの答えだった。
拒絶と軽蔑、憎悪を含んだ、それは、彼女にトドメを刺すのに十分だった。
彼女だけ、顔に赤い罰が書かれていた。
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水無月のぞみ - あのグズさっさといなくなればいいのに! (8月3日 19時) (レス) id: ba8b16685c (このIDを非表示/違反報告)
うさぎりんご - あの!このお話はもう更新しないのですか?失礼を承知なのですが続きがとても気になります…もしよければ続きを書いていただけませんか? (2022年3月24日 18時) (レス) @page8 id: 5a928aef25 (このIDを非表示/違反報告)
(o´・ω・`o)(プロフ) - めっちゃ気になるとこで終わった……続き楽しみだったのに… (2021年5月5日 16時) (レス) id: 1f4799768f (このIDを非表示/違反報告)
ワグマン - 終わってまうんですか、もっとみたいです(* >ω<)応援してます(*^^*) (2020年8月11日 12時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - え〜!ここで終わり何ですか?続き見たいです!更新頑張ってください!応援してます!! (2020年6月25日 18時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チェスト | 作成日時:2020年1月3日 2時