深夜バスで君を見た【うらたぬき】

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思い出そうとしても、Aの顔には靄がかかる。
写真はあるけど、これは俺たちが小学生の頃。
容姿なんて変わったに決まってる。

もう、俺だって今年でもう30だし、そうなったら、Aは33。
俺たちは、15年は会ってないことになる。
その15年会えなくてもいいから、せめてなにか手がかりになるものが欲しかった。

でも、そんなものなかった。
地元に連絡してみたが、Aが帰ってきたなんて連絡は一つもなし。
東京に越してきてから、二年ほど経つと両親だけ地元に戻ることになった。

でもそれでも、連絡は一つもなし。

うらた「あのOLさんって可能性は低いか…」

やっぱそうだよなぁ…
髪を乾かすと、ベッドに入り、目を閉じる。
この日は遅かったからか、すぐ眠りにつくことが
出来た。

そして夢を見た。

幼馴染のAとの夢。

“渉ーこのゲーム一緒にやらない?”

“このアニメ、めっちゃ面白かったよ!
主人公が世界のために、死んじゃうんだけど、でもめっちゃ感動シーンとか多かったし、めっちゃ面白かった!”

うらた“そんなにか?面白いんなら、…見る”

“一緒に観よ!私、もう一回観たい!”

アニメのことになると、思わずネタバレしたりはするけど、止まらなくなって、そのアニメを一緒に観て俺もハマって。

うらた“俺、受験が終わったら、Aに言いたいことがあるんだ”

“分かった!お互い、受験頑張ろ!”

そう言ってくれたけど、Aは受験が終わって合格が発表されると、上京していった。

“わたる!お山つくろ!”

小さい頃から、明るくて、でも小学3年の夏頃からAはゲームに熱中する様になって、外に出ることは学校に行く以外なくなっていた。

でも、俺が遊びたいって言うと遊んでくれた。
嫌な顔一つせず、暇だからいいよって、笑って俺の遊びに付き合ってくれた。

映画だってみたいのがあって、Aを誘ってみると“私も観たかったの”って言って来てくれる。
そういう、優しいところが好きだった。

でも、テスト勉強とか余裕綽々で、体育祭とか、走れば1位独走したりすることだってあった。
なんでもできる、そんなところも好き。

でも、家事はあんまり手伝ったことなくて、料理とか壊滅的だったっけ?
洗濯機だって回したことがないから、勿論自分で回そうとすると、洗剤入れ過ぎて泡が溢れてきたりしたっけ?


Aに、会いたいな。

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