検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:28,992 hit

フィクションエンドロオル - 花巻貴大 ページ5

. you side

一ヶ月前のことだった。
友達の花巻が、事故に遭って記憶を失った。
今は大学生。
事故に遭ったのは、卒業式後、二人で帰っていた時花巻が私を庇って事故に巻き込まれた。

花巻の親御さんに只管、謝っていた。
土下座までして、謝った。
花巻の親御さんは、当たり前の如く、許してはくれなかった。

当たり前だ。
自分の息子が事故に遭ったのは、目の前にいるコイツの所為だと思うと許せなかったのだろう。

「花巻…」

目を覚ました花巻は、冷めた目で、私を見た。
「…お前、誰?」

いつもの返答とは、違った。
どうやら高校での三年間の記憶を失ったらしい。

それが一ヶ月前までの話。
今は、東京の短大に二人で通っている。

「なぁ、そういえばさ、」

電車のつり革を握り、目の前に座る、私に小声で話掛けてくる花巻。

「よく、俺の見舞いに来てくれてた女の人と男の人いたじゃん?俺が目覚めた時にもいた、…その人達って俺のなんなんだ?」

スマフォを操作する手を止めて、顔を上げる。

「花巻とは、一切関係ない人達だよ」

花巻が言ってるのは、きっと母親と父親のこと
だろう。

「…そうなのか。ならいい」

視線を逸らして、バツが悪そうな顔をする。

「隣、空いたんだし…座れば?」
「…おう」

電車が止まり、私の隣に座っていた人が降りたためそこは空いた。
花巻はホームで待っていた人が入って来る前に、私の隣に座った。

「…さっきの話」
「え?あー…女の人と男の人の?」
「そ。…実は、あの人達、私の従兄弟の両親なの」

「え!?じゃあ…なんで、俺の見舞いなんか…」
「友達が事故に遭った…どうしようってメールしたら飛んできたんだよ」
「そーなんだ」

まあ、無理がある話だろうけど。
花巻は一向に記憶を取り戻さないままだった。
それは私にとって好都合な話なんだけどね。

「そーいえば…俺の、母親と父親って、
どこにいんだろ」

隣でボソッと呟かれた言葉を聞き逃すことは
なかった。
口角を上げたのがバレないように口元を手で覆う。

そうだなぁ。

"死んだら"会えるかもしれないね。

でも、私より先に死ぬのなんて、許さないよ。

「あと、もう一つ」
「なんじゃい」

「俺とお前、俺が記憶を失う前、ホントに付き合ってたのか?」

これも、記憶を失った花巻についた嘘。

「ホントだよ」

私は、笑みで返した。



…と、いうことにでもしておこうか。

この全てが作り話。


花巻が失ったのは、高校時代の記憶だけじゃない。
親が居たっていう記憶も、"その存在も"。

林檎ー拙/想>1 - 角名倫太郎→←群青のランデヴ - 日向翔陽



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
62人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

チェスト(プロフ) - なっとう。@発酵食品さん» そうです。メーベル聴きながら話考えてて、思いつきましたw (2019年8月17日 18時) (レス) id: 579d6c2eb3 (このIDを非表示/違反報告)
なっとう。@発酵食品(プロフ) - こういうのめっちゃ好きです…。角名くんの話ってバルーンさんのメーベルがモデルだったりしますか? (2019年8月17日 13時) (レス) id: 83d65d7bd2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:チェスト | 作成日時:2019年8月1日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。