リプレイス - 月島蛍 ページ11
. tukishima side
「…え」
「どうかした?ツッキー?」
帰り道。
他校の制服を着た男と彼女のAが仲良く帰っているのを目にした。
腕を組んで、楽しそうに、話している。
その姿に苛立ちを覚えた。
「_____い、蛍!」
「…A?なに、どうしたの?」
「一緒にお昼、食べよ!」
「…いいよ」
なにもかもが夢だ。
現実は、ワンルームに、唸り声だけが響く。
怯えている目が、それが嫌になった。
あの頃には戻れない。
ものの数日。
Aは抵抗しなくなった。
手から滲む血。
カッターを向けると、暴れ出した。
自分が殺されるとでも思ったんだろう。
そうじゃないのに。
ただ、ガムテープ切ろうとしただけなのに。
腕が切れて、鮮血が流れ出す。
僕は、そこにガーゼを貼って、Aに言う。
「暴れないでよ。
数が増えるよ。
僕はAのこと、傷つける気なんてないからさ」
そういうと、大人しくなる。
首にマフラーを巻いて、彼女の頰に手を伸ばす。
ガムテープ越しにキスをする。
「早く、治るといいね」
前は触れることすら出来なかった。
でもAへの好意は、嘘ではなくて、触りたいって思っても、触ることが出来ない。
最初は、ただ鬱陶しかった。
でも目が離せなくなってて、いつからか、好きになっていた。
欲しいとまではいかなくとも、伝えて、振られるならこの気持ちはなくなるだろうと思いAに、言ってみた。
でも、望んでいた返事とは違った。
受け入れてくれて、それが嬉しくて、でも、独占欲は募っていくばかりで。
交友関係が広いAは男女問わず人気だった。
だから、Aと楽しそうに話すソイツらに苛立ちと嫉妬心だけが募るばかり。
「元に戻ろう。A」
Aの目から、涙が溢れる。
塞がれた口から、ただ僕を責めつくす言葉が出てくるって考えるとガムテープを外したくない。
ただそれが恐いだけ。
なにか、理由が欲しかっただけ。
終わり ログインすれば
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チェスト(プロフ) - なっとう。@発酵食品さん» そうです。メーベル聴きながら話考えてて、思いつきましたw (2019年8月17日 18時) (レス) id: 579d6c2eb3 (このIDを非表示/違反報告)
なっとう。@発酵食品(プロフ) - こういうのめっちゃ好きです…。角名くんの話ってバルーンさんのメーベルがモデルだったりしますか? (2019年8月17日 13時) (レス) id: 83d65d7bd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チェスト | 作成日時:2019年8月1日 19時