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不幸端部 - 赤葦京治 ページ1

. you side

ねえ、私と妹、なにが違うの?
全部一緒じゃない。
容姿だって、声だって、交友関係だって、なんだって嫌だって思うくらい一緒じゃない。
なのに、どうして?

どうして私じゃないの?

私には双子の妹、真希がいる。
両親からの愛も平等に貰ってきたよ。
異性からだって、そりゃ、一度は付き合ったことはある。…でも、その人もまた真希を好きになる。

私のこの卑屈な性格が駄目なのって?
これも全部真希の所為。
……赤葦くんだって、そう。
私が、先に出会って、勇気を出して話しかけたのにまた真希は私から奪った。
私が先に恋をしたのに。
告白しようとした矢先、真希も赤葦くんを
好きになった。

でも、残念だね。真希。

真希は、死んだ。
事故だった。

まだ運ばれてない遺影に映る笑顔、そして、それを嘲笑うかの様に、高笑いをする私。
心の何処かで生まれた劣等感。
誰も居ない、暗いその場所で、ただ笑っている。

泣こうとしても嬉しいから涙なんて出てこない。
もしもの為に用意した目薬まで使って、ハンカチで目元を抑えて、泣いた振りをした。
両親も、友達も、その死を、悲しんでいた。
嬉し過ぎて逆に涙が出てくるよ。

私って、最低だ。

「死んでくれてありがとう。真希」

……本当に、ね。

背後から不意に声を掛けられる。

「…Aさん」

振り返るとそこには、真希の彼氏だった、そして私の想い人の赤葦くんがいた。

「赤葦くん…どうしたの?」
「…火葬場、行かなくていいの?」

目元を腫らして、俯きながら言う赤葦くん。

「行かなくていいよ。
だって今、嬉しいんだ。すっごくね」
「…え?」

震えた声。

「ずっと、…真希が、うざったかった。
嫌いで、嫉妬してた。
だから、居なくなってくれて、嬉しいの。
嬉しくて涙、出てきたよ」

信じられないとでも言いた気な目を向けてくる
赤葦くん。
その目は憎悪も含まれていた。

「赤葦くんは、真希が居なくなって、寂しい?」
「…寂しいよ」
「じゃあ、その寂しさ、私で消す?」
「…は?」

「いいよ。代わりでもいい。だから…」

“愛して”

虚しく消えていく声。

真希が居なくなってくれたから、私、幸せになれそうだよ。…ありがとう。

不幸端部 - 赤葦京治 (後編A)→



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チェスト(プロフ) - なっとう。@発酵食品さん» そうです。メーベル聴きながら話考えてて、思いつきましたw (2019年8月17日 18時) (レス) id: 579d6c2eb3 (このIDを非表示/違反報告)
なっとう。@発酵食品(プロフ) - こういうのめっちゃ好きです…。角名くんの話ってバルーンさんのメーベルがモデルだったりしますか? (2019年8月17日 13時) (レス) id: 83d65d7bd2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:チェスト | 作成日時:2019年8月1日 19時

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