Mermaid．ytym (ページ11)

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ｙｍ

大学へむかう道を

裕翔くんと歩いてるなんて、

気がどうかなってしまうんじゃないかって位
気を使うもんだ。

寝癖ついてないかな、
歯磨き粉ついてたらどうしよう。

話ってなんだろう。

「あの…さ。
俺ずっと言ってなかったことがあ『裕翔くん！』」

「や、ま…？」

「裕翔くん。俺の話、先に聞いて？」

きちんと気持ちを伝えたい

改まって家まで来て言う話なんて
重大なことに決まってる。

俺にとっての重大なことは
毎回悪いことだというのも
この人生歩んできてだいぶ理解している。

「いいよ。なぁに？」

自分勝手だけど。
きちんと振ってほしいんだ。

「裕翔くん…俺裕翔くんが好き。大好き。
その…恋愛として。友達じゃなくて！

裕翔くんの声とか笑い方とか優しさとか

もう全部全部全部！！！！大好き！！！！

こんなこと許されないのわかってる！

だから、だから、俺をきちんと振ってください。」

チュン、チュンと

雀が俺の声量に苦情を入れてくる。

線路の上を電車が
走り抜けた。

フェンスの前に落ちる空き缶に
赤いもみじが潰されていた。

アスファルトが朝の冷たい空気に
ひんやりと振動する。

ありありとした情景が目の前に浮かび

その景色の中に

真っ白なキャンバスの中に

1滴だけ落とした赤い絵の具。

じわっと広がって

白をうっすらと桃色に染める。

ティッシュで拭いたって
完全に拭えない

どんだけ振られたって
きっと俺は裕翔くんを忘れない

「やま。あのね。俺もやまが好き。

好きです。付き合ってください。」

電車がゆっくりと線路を歩く

風がふぅっと通り抜ける

全てがゆっくりと

でも確かに動いていた。

「やまと、同じ気持ちです。」

今すぐ抱きつきたいのに。

地面に根っこが生えたように、

俺は裕翔くんという景色を眺めることしか
できなかった。