★私の家族 ページ20
パシン
乾いた音ともに痺れる痛みが右頬に走った。
頭が真っ白になった。
涙が頬を伝っている。
それは初めて見る、母の涙だった。
すかさず兄達が私の両脇に腕を回す。
何事か、と周りの旅行客は物珍しげな視線を向けていた。
「え、お前どうした？」
長男の驚いた声に私の頬をはたいたお母さんもみるみる目を丸くしていった。
私はすぐに理解した。
お母さんは、本当はすごく怒っていたんだ。
泣きたくなるほどに私を叱って、自覚を持たせたかったんだ。
こんな特殊な病気を持っているのに一人で抜け出すことがどれだけ危険なのかを。
でも電話口でそんなこと言ったら私が眠ってしまうから、どこで意識を失ってしまうか分からなかったから言えなかったんだ。
「ごめんなさい、お父さん、お母さん……」
うるうると目の前が潤んでいく。
「おい、お前どっかぶつけた？ まじで大丈夫か？」
兄達からしたらこの状況に私が眠らないことが異常なようだ。
「うん、大丈夫。離していいよ」
恐る恐る手を引く彼らの姿を見て、私はまた罪悪感に包まれた。
きっといつもこうして、私が怒られる時は支えてくれていたんだね。
さっと頭を下げる。
おわっ、と二人の声が聞こえた。
大方私が倒れ込んだと思ったのだろう。
「勝手なことをして本当にごめん」
しかし私がそう力強く告げたことによって皆の手は止まった。
「心配かけてごめんなさい」
しっかり我慢できていると思ってたのに、自分の声は思った以上に震えていた。
大きな手が、私を抱き寄せる。
「良かった……本当に……」
「おどうざん……」
それから私は父と母に抱かれ、わんわんと泣きじゃくった。
両親の抱擁、撫でてくれる手のひら、穏やかに包んでくれる声、全てに私への愛を感じて嬉しくもあり、同時にそれを裏切るような行動を自分が起こしてしまったことを深く反省した。
「俺、Aがこんな泣くの見るの初めてだわ」
「俺は父さんと母さんが泣くのが初めてだ」
そう言葉を交わす彼らの瞳にも幾分かの涙が光っていた。
これは後になって長男に聞いた話だが、母はあの夜、私がいないことに気がついてありえないくらい取り乱していたらしい。
父が危ないからやめろと言っても私を探すと言って外に出ようとしていた。
そこで最後の神頼みとして私に電話したらドナテロが出た、と。
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猫田七樹(プロフ) - コトブさん» いやあん、こちらこそ読んでくださる方がいると嬉しくてたまりません！w いつも少しずつで申し訳ないんですけども何卒よろしくお願いします…！！ (2020年4月10日 1時) (
レス) id: ab2594ca6b (このIDを非表示/違反報告)
コトブ - 最近、更新頻度高くて嬉しいです！更新される度に大喜びしてます笑 読みやすいし、読んでて楽しいです！いつもありがとうございます！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年4月9日 14時) (レス) id: 18baf5e626 (このIDを非表示/違反報告)
猫田七樹(プロフ) - コトブさん» うわああん、いつもありがとうございます！！ 励みになります(´；ω；｀)！ (2020年4月1日 2時) (レス) id: ab2594ca6b (このIDを非表示/違反報告)
コトブ - 集合写真の絵、すごく上手ですね！分岐ルートも全部読みました！更新してくれて嬉しいです！ (2020年3月31日 16時) (レス) id: 18baf5e626 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ - 「グリーンな恋心」…………… タイトル良いですね♪ 面白いです！これからも頑張って下さい！！ (2019年3月13日 18時) (レス) id: b4096def55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫田七樹 | 作成日時：2017年10月3日 21時
