「ラファエロ」 ページ2
ラファエロだ。
何も見えなくても彼だと言うことは分かる。
だって近づいてくるたびに私の胸が反応するんだ。
風に煽られた炎のように、どんどん熱い気持ちが膨らんでくる。
重たい足音を響かせ、彼の顔が見えた。
真っ赤なハチマキが靡(なび)いている。
そう、彼の心も煽られていた。
「ラファエ――」
「何も言うんじゃねぇ」
そのままラファエロは私を抱きしめてくれた。
両目の端から涙がこぼれ落ちて、抱きしめてくれているラファエロの肩を濡らす。
「ごめん、ごめんねっ。ありがとう……」
一度肩を離した彼は私の顔を見てハッとした。
左頬の傷口に親指を押し当てられる。
鈍い痛みが走り顔を顰(しか)めた。
「シュレッダーにやられたんだな」
ラファエロはいつになく怒り口調で、しかし落ち着いた声でそう言った。
あっ、やっぱり怒られちゃうみたい。
そうと決まれば思いっきり怒られてやろう。
「許せねぇ……」
あまりもの剣幕に少し不安になって彼を見上げた。
その表情を確認する間もなくラファエロは私の裏手に回って、なんと素手で縛ってあったロープを引きちぎった。
私が引っ張ってもびくともしなかったのに、と呆気にとられていると、ずんずんと私に近づいてきた彼はいきなりお姫様抱っこを決めてきた。
「わわわっ、なに!? ひ、一人で歩けるよ!」
大きく鍛え上げられた腕にがっちりと支えられて、いつもより顔の距離が近いことに熱くなってしまう。
近くの段差に私を座らせるとラファエロも目の前に膝を着いた。
「あの時、俺がボールを取りに行ってりゃ……」
皆まで言わずとも彼の心は痛いほど伝わった。
再び頬の傷に手を当てがうラファエロ。
「ううん。でも私、これのおかげで大切なことに気づいたんだよ」
ラファエロの手に自分の手を重ねた。
「大切なことだと?」
小さく頷き、緊張で赤くなった顔をそのまま俯かせる。
「私ね、えっと……ラファエロがね」
それでも言い出せずに口ごもっていると、ラファエロが立ち上がった。
「何言おうとしてんのかわかんねぇが」
私の傷口に当てていた親指をペロリと舐め、腰に差していた武器を手に取った。
「俺は好きだぜ」
「ラファエロ……」
私に背を向け、軽く準備運動をしている。
「うん。好きだよ」
それを聞いてか聞かずか、彼は駆け出した。
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作者名:猫田七樹 | 作成日時:2019年12月9日 13時