雨の日に ページ13
その後も色々と質問されたけど、心を痛めながら言葉を返した。
ううん、平気。
心が痛いのはきっと傘が折れたから。
皆が言うようにこの人に関わってもいい事なんてないもの。
「……それじゃあ、シツレイします」
今井さんはしおれた声でそう言った。
「はい、どうも……」
良かった、やっと行ってくれる……。
ほっと胸をなでおろしていると、バサッと何かが覆いかぶさった。
びっくりして顔を上げると、ブレザーを脱いだ今井さんが目の前に立っている。
そして私の肩には濡れて重くなった彼のブレザーが。
「えっ、ちょっと！」
「今日は雨やまねーゾ。それ傘代わりにして早く帰んな、カゼひくゼ」
そうして今井さんは路地に続く角を曲がった。
私はそれにかける言葉がなかった。
両肩に感じる重みは本当に雨のせいだろうか。
それとも自責の念なのだろうか。
でも、こんな服肩にかけてたら紅高の知り合いだってバレバレだ……。
それに目立っちゃうし……、今井さんには悪いけどこのブレザーは置いていこう。
その重みから逃げるようにその場を後にした。
その夜、私は家を飛び出した。
まだ雨は降っている。
それでも傘を持たずに飛び出したの。
心臓の鼓動が痛いくらい早まっている。
多分人生で一番苦しかったと思う。
それでも足を止めずに走った。
息をするたびに寒さで喉の奥が凍りつきそうだった。
やがてあの屋根が見えてきた。
「……あった」
私が置いたまま、そのままでそこにあった。
ピチャピチャとゆっくりと足を進める。
灯りの乏しいこの道に、雨が反射して光を届けてくれる。
そのブレザーはすっかり冷え切っていて。
それでも構わず私は胸に抱き寄せた。
「へっくしょん！」
うーん、今日はいつも以上に寒い。
もう一枚着込んでいかなきゃ。
いつも通りに窓を開け、制服に着替え、一階に降りる。
「おはよーA。昨日は夜遅くまで何やってたの？ キッチンでイロイロやってたみたいだケド？」
「えっ、いや……別に。姉さん、今日何か用事ある？」
「イーエ、無いわよ」
「じゃ、じゃあ。紅羽高校の場所、教えてくれない？」
「紅羽高校？ 紅高って、今井さんのトコだっけ？」
ビクッと明らかに動揺してしまった。
「ナーニー？ 赤くなっちゃって！ 熱でもあんじゃないの〜？」
案の定姉さんに見透かされ、茶々を入れられた。
「ば、バカじゃないの！ と、とにかく、今日の放課後よろしくね！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 251人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫田七樹(プロフ) - のてさん» すみません、まだ作っていないのです(；▽；) でもこれから作ります！ 更新ペース遅くなるかもですが楽しみにしててください！！ (2020年9月8日 1時) (
レス) id: ab2594ca6b (このIDを非表示/違反報告)
のて - 続編ってどこにありますか？？ (2020年9月7日 23時) (レス) id: 33a7fd7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
猫田七樹(プロフ) - クソすぎる駄作者さん» ぺーヽ(ﾟ∀｡)ﾉ (2019年1月25日 17時) (レス) id: 13e53b62aa (このIDを非表示/違反報告)
クソすぎる駄作者(プロフ) - 猫田七樹さん» ううううううん！！それで大丈夫だ！いや待てよ…？なんなら1000回押そうか… (2019年1月25日 0時) (レス) id: 2effaca00b (このIDを非表示/違反報告)
猫田七樹(プロフ) - クソすぎる駄作者さん» もももももちつけ！！ 君の気持ちは痛いほど分かった！ よし、それなら同じ内容の小説を100回投稿する。それでいいな？ なっ？ (2019年1月24日 12時) (レス) id: 778e43cdb3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：猫田七樹 | 作成日時：2018年11月1日 2時
