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29 -Taiga- ページ29
暫く抱きしめあっていた2人はそっと離れて顔を見合わせて笑いあった。
「お腹空いた。」
ムードも何もない一言。
北斗は呆れたようにAを見た。
「オムライス食べる？」
「パスタの気分。」
「我儘。」
「…我儘じゃないし。」
2人はそっと手をつないだ。
重なる影。
さすがに見るのも悪いから、目を逸らしといてやった。
「準備してくる。」
事務所の裏に駆けていったA。
その隙を見て俺に近づく北斗。
絵の前で足を組んでいた俺に「ありがとな」と一言。
「鉛の矢を射れば、その人は恋を忘れる。
黄金の矢を射れば、その人は恋に落ちる。」
「知らないね。俺はレプリカだ。」
俺がどちらの矢を打とうと、それは本人の暗示でしかない。
俺はレプリカだ。
Aに鉛の矢を打ったか。
北斗に黄金の矢を打ったか。
そんなの知らなくていい。
「Aのこと、幸せにしなかったら許さねえから。」
これが俺からお前への餞別だよ。
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作者名：SoRA | 作成日時：2021年5月10日 20時
