クピードの弓矢 (ページ23)

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23 -Taiga- ページ23

北斗との話の途中で鳴り響く電話。

｢すみません。｣

Aはゆっくり席を立ち、受話器をとった。

｢もしもし。恋愛コンサルタント、花宮と申します。…松村様。お電話お待ちしておりました。｣

北斗の視線がAに向かう。

｢息子さんは、恋愛に興味を持たれたようです。
素敵な息子さんですよ。
人のことをよく見て、その人の歩幅に合わせて歩いていくことができる。
きっと、素敵な人と巡り会うことが出来ると思います。｣

Aの声が震えた。

｢予定より早いですが、本日でコンサルタントは終わります。
代金に関しましては、また後日ご連絡させて頂きます。｣

受話器を置いて、Aが振り返る。

今にも泣きそうな顔で、Aは言った。

｢分かったでしょ？｣
｢分からないよ。｣

北斗は静かに言い返した。

｢全部、仕事だったの。
北斗のお母様からの依頼。
全部全部。私は不倫なんてしてない。｣

北斗はただ静かにAのことを見ていた。

｢……もし出会い方が違えば。｣

Aは北斗の目を見て、悲しそうに笑う。

｢ちゃんと恋愛ができたのかもしれないね。｣

北斗は黙って事務所を去る。

Aは報告書を打ち始めた。

俺は、北斗を追って事務所を出た