クピードの弓矢 (ページ16)

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大学時代から、社会人2年目まで。
結婚まで考えた元カレがいた。

森本慎太郎。

今目の前で「ぱぱ」と呼ばれた彼である。

「結婚したんだ。子供も…。」
「あーうん。双子。」
「おめでとう。」
「ありがとう。」

円満に別れたから、気まずくはない。
でも、彼は私から切り出した別れの理由を知らない。

子供が好きな慎太郎。
双子ちゃんたちを見る目は優しい。

「ぱぱのおともだち？」
「うん。そうだよー。海、ごめんなさいは？」
「ごめんなさい。」
「私の方こそごめんね。」

「A。イルカショー遅れる。」

北斗が私の手をそっと握った。

慎太郎が初めて北斗を認識したようで少しだけ驚いたように私を見た。

「結婚したの？」
「…ううん。まだ。」
「…そっか。」

それでもうれしそうに私を見る彼に胸が苦しい。

「じゃあね。慎太郎。」
「うん。じゃあね。」
「子供、走らせたらダメだよ。」
「あはは。気を付ける。」

「いこう。」

北斗は複雑な表情で私を見つめていた。

私は、今、どんな顔をしているだろう。