愛しい君よ、さようなら。【原石青】 (ページ21)

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『こち…それって…』

「あ、俺このまま外回り行くわ、んじゃまたね。」

そう言って髙地は支払いを済ませ出て行った。

『素直になれ、かあ…』

田中君は、受け入れてくれるのかな。

もうこんなおばさん、忘れてるかもしれない。

……一か八か。かけてみようか。

覚悟を決め、私はトークを開いた。

A田中くん、お元気ですか。

A櫛木です。

中々文字を打てない。

画面の上を、指がさまよう。

一文字一文字、ゆっくりと打ち込んでいく。

Aもし、また会ってくれるなら

AまたLINEしてください。

あとは、返信を待つだけ。

時計を見ると、かなりの時間悩んでいたらしい。

そろそろ会社に戻らなければ行けない。

『……がんばろ。』

席を立って、会社へと急いだ。

退勤時間を迎えて、席を立った。

「櫛木おつかれ〜」

『向井もおつかれ。また明日。』

「櫛木おつかれ。どう？」

『あ、こち。ありがとうね、さっきは。』

『まあ、一応LINEした。まだ携帯みてないけど。』

「そっか。返信、あるといいね。」

『うん。ありがとう。また明日ね。』

「はーい。明日ね。」

ビルから出ても、寒い風はもう吹いていない。

1年ぶりの4月の温もりが、私の体を包んだ。

そういえば、スタバの新作まだ飲んでないな…

そう思って、スタバへと足を運ぶ。

スタバに近づくにつれて、胸騒ぎがした。

遠くに見えるその姿に、

どこか見覚えがあった。