[アンデル]Fake or Phantom？[ぷよクエ] (ページ2)

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第一話ページ2

これを手に入れたのは、つい最近の事。
私の目の前に、突然彼女が現れた。

この島、プワープアイランドに何らかの拍子で
飛ばされた私は、何も思わぬまま広い街を歩いた。
自分の任務を思い出そうとするが、どうしても思い出せない。
元の世界では、私は組織の上の者達に虐げられているだけの
ただのエージェントの内の一人。
その為、生まれつき何の能力も持っていない普通の人間である私は、
この島のそこかしこで繰り広げられる光景に只々驚嘆するばかりだった。
そんな私がその光景の当事者の一人に
なってしまうのは、彼女に出会ってからの事。

「こんにちは。」
そう私に話し掛けてきたのは、眼鏡を掛けた品の良さそうな女性だった。
その腕には黒猫のぬいぐるみが抱かれている。
へえ、中々の美人ね。
『あら、こんにちは。』
心証を悪くしない様に、こちらも笑顔で返す。
「見ない方ですね。貴女もここに飛ばされてきたのかしら？」
『ええ。ここにいる人の話によれば、
この島はプワープアイランドと言うそうね。
話を聞くまでは、この場所の事は本当に知らなかったわ。貴女は？』
「ふふ。さぁ、どうでしょうね。」
何故か含み笑いをしながら、私の問いを濁してきた。
今度は彼女が私に名前を問うてくる。
「申し遅れました。私はアコールと言う者です。
別の所で魔導学校の先生をしております。
宜しければ貴女のお名前も聞かせてくれますか？」
『私はAよ。ここに来るまでは…、
ごめんなさい。飛ばされた衝撃で忘れてしまったみたい。』
明らかに別の世界だろうけれど、念には念を入れて
私の職業の事は伏せておきましょうか。
「構いませんよ。それよりも、貴女に差し上げたい物がありまして。」
『私に？今出会ったばかりでしょう？』
「ええ。ですが、貴女に会った途端にこの石が輝き出しまして。」
そう言いながら持っていた杖を振ると、
私の目の前に黒い石が嵌め込まれたピアスが浮かんだ。
ピアスがひとりでに私の左耳に移動し、
その針が私の耳朶を貫こうとしたが。
「ふふ、そうだったわね。
このままではピアスが通せませんね。
少し痛いけど我慢してね。」
また杖を振ると、私の左の耳朶に小さな穴が開いた。
じわりとした痛みが広がる。
その隙を見逃さないと言う様に、ピアスが穴に差し込まれた。
「とても良くお似合いですよ。
やはりそのピアスは貴女が持つに相応しいわ。」
『…貴女も悪趣味ね。』
そう返すのが精一杯だったが、彼女は笑みの表情を変えなかった。