お題:かきくけこ5-4(後) ページ13
『 ──…ヒッ、お前…』
鬼に怯えられる日が来ると誰が思ったか。襲いかけた鬼がまるで敵わない格上を見る様に怯え、機微を返され闇に消えたのだ。
それが怖かった。
ただの人間だと思っていた自分が、
鬼の力を強める稀血という存在で。
もしかしたら、自分のせいで村もお武家様の屋敷も襲われたのだとしたらと考えたら心が潰れそうだった。
それなのに、そんな鬼に畏怖され倦厭さらる自分が何者なのか解らなくなった。
──…だから教祖様を見た途端 、子供みたいに泣いてしまった。
考えたくない。
けれど1つの結論から全てが繋がる気がして、教祖様に言えない言葉がある。
『 手に入れる為に、貴方が裏で手を引いていたんでしょう?』
──…なんて。
「童磨様、早く帰って来て下さい」
怖い事も、知りたくない真実も独りだと考えてしまうから。
傍に居て欲しい、そうすれば何も考えなくて済むから。
ちらりと氷像へと視線を向けると、おやすみなさいと呟き瞼を閉じた。
***
(あーぁ、また泣いてる)
蝋燭の光に浮かぶ寝顔に遺る涙の跡。
氷の指先で拭ってやっても深く眠りこんでいるのか、起きないのは良いのか悪いのか。
氷像越しの寝顔に苦笑すると、
もうすぐ帰るからね、と呟き唇の端から垂れた朱を拭った。
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作者名:ゆきの(snow-no) | 作者ホームページ:http://id24.fm-p.jp/277/snownobox/
作成日時:2020年2月23日 1時