お題:かきくけこお題5-3 ページ11
3.くれるなら全部貰う
「うん、これが良いかな。良く似合う」
ニコニコと機嫌良さげな教祖様が手にしていたのは、高価な反物。
信者からの貢ぎ物だという。
それを此方へ幾つか宛てがい、やっと教祖様が気に入るモノがあったらしくウンウンと1人頷いている。
「じゃぁこの子のに仕立てて」
「畏まりました」
手渡された反物を恭しく受け取り退室してゆく信者を見送り、小さな溜息が零れる。
「教祖様、まだ新しい着物はなくても…」
「童磨!どうせ俺は着ないし信者もアレだし反物だって放っておかれるより着て貰った方が良いでしょ」
「…童磨、様…じゃぁ戴きます」
あの日泣き止むまで抱き締めて、こんな自分を欲しがってくれたから。
全てを教祖様に捧げようと頷いた。
信者として、と思っていたが何故かまるで伴侶の様に隣が定位置になっていた。
教祖様と呼ぶのも禁止された。
呼び慣れないのもあって教祖様と呼ぶ度、訂正される日々だが教祖様はそれすら何処か楽しそうだ。
くれるものは全部貰う。
そうする方が教祖様も嬉しそうだから。
品物も、言葉も、優しさも。
甘やかされてると自覚している。
大切にされているのかは、分かり兼ねる。
教祖様は時折他人事の様な表情をする。
気持ちが伴わないというか、絵空事みたいな。
けれど、声を掛ければそれは何時もの笑顔に掻き消される。
教祖様が何を隠しているのか、解らないけれど。
貴方がくれるモノは全部貰うから、貴方も救われて欲しいなんて烏滸がましいでしょうか…。
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作者名:ゆきの(snow-no) | 作者ホームページ:http://id24.fm-p.jp/277/snownobox/
作成日時:2020年2月23日 1時