お題:恋の台詞 5-2(前)/童磨※微グロ ページ2
2.「…知ってた。ごめん」
(う、ん…)
ふとした瞬間、深い眠りの中にあった筈の意識が浮上した。
まだ覚醒仕切らない意識が、何処からか聴こえる水音を拾った。
微睡む意識は、その水音だけを伝えてくる。
(何の音…)
自身の眠る部屋の傍に水場は無かった。
何より、聴こえる水音は不規則で時折重く何かの質感が混じっている気がしてその音に意識が引き摺られてゆく。
「──…」
睡魔はその音に釣られてなりを潜めてしまい、褥から静かに抜け出すとその音に導かれる様に闇に溶けた廊下へと足を踏み出した。
ピチャ、ビチャ…グチャ…
皆が寝静まった屋敷で、聴こえる水音には覚えがあった。
覚えていたくなかった音。
忘れてはいけない筈の音と──…匂い、
──…忘れて居たかった、記憶。
教祖様の寝所。
近付いてはいけないと言われているけれど、聴こえる水音に導かれる様に止まらない足は、何時しか最奥の部屋の前。
その闇の中から差し込む細い光へと指を伸ばした。
「おや、こんな時間にいけない子だねぇ」
指先が襖に触れる前にカタンと、小さいな音と共に視界に光が溢れ逆光の中立つ一際大きな影が在った。
「教…祖、様」
「夜は来ちゃ駄目だと言ったろ?」
聞こえる声音は普段と変わらない。
けれど、吐き出される言葉と共に錆びた匂いが自身へと降り注ぐ。
──…この匂いを知っている。
それが何か、あの音が何からしているのか。
目が光に慣れて来たのか、大きな影の奥に見えてしまったモノに目が奪われる。
お題:恋の台詞 5-2(後)/童磨→←お題:恋の台詞 5-1 /童磨
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作者名:ゆきの(snow-no) | 作者ホームページ:http://id24.fm-p.jp/277/snownobox/
作成日時:2020年2月23日 1時