【参加者大募集中！】SnowSchool【短編集版】 (ページ30)

今日:7 hit、昨日:18 hit、合計:3,419 hit

何十年、何百年【？？？・朦刻泡】ページ30

・

　桜の季節。

　私の所に、一人のお客が現れた。
　私が居るのは、小さな神社。捜し物が見つかる、と、評判の、小さな神社。
　お客が鳥居を潜った時、私は後ろに降り立つ。私は息を吸って、いつも通りの言葉を掛けた。

「こんにちは、綺麗な銀髪のお兄さん！…この神社に来たって事は、捜し物があるのかな？

　＿＿＿＿ねぇ、捜し物は何？大切な物？大切な人？楽しい思い出？嬉しい言葉？
＿＿＿＿＿この千里眼で、何でも見つけて上げるよ。」

　お兄さんの場合、もう、代償は別の人から貰ってるからね。要らないんだ。
　
　にっ、と笑ってみせると、彼は驚いたように、後ろを振り返ったけど、
　私の姿を一瞥すると、こっちをしっかり見て、こう言った。

　「朦刻泡を、探しているんだ。」

　うん！と頷いて、彼の手を引いた。

・

　「この先の、縁側に居るよ。
　…桜と、藤、それにスズランが見えるところ、って泡ちゃんは言ったでしょ？」

・

　正午の鐘が鳴った。
　私、朦刻泡は一つ、大きな溜息を吐いて、短刀を手に取る。

　樹齢千年を超える、藤の大木の幹に、また新しい傷を付けた。
　一日一本増えていく、この傷は、これで何本目だろうか。

　 …藤の花言葉は、「恋に酔う」、それに「歓迎」なんて意味もある。
　それに、「決して離れない」。
　その根元に小ぶりに咲く鈴蘭は、「純粋」「謙遜」…「再び幸せが訪れる」。
　最近、紫のアネモネも増えたみたい。…花言葉は、「貴方を信じて待つ」。

・

　「何十年、何百年......待っててくれ。俺の為に。
絶対俺はお前の所に行くから。だから――――――......」

　結局、今何十、か百か、経過しているわけで。

　 …噓だと判っていても、彼を、諦めきれない。
　彼からかけられたその"呪い"は、いつまでたっても私を解放してはくれない。

　だってほら、彼が死んでいたり、その約束を忘れていたとしても、
　私は永遠に待っているのだから。

・

　三時の鐘が鳴った。
　今日は、新鮮な苺が手に入ったので、それを使って、久々にお菓子作りをした。
　…料理を作る時は、いつも、必ず二皿作っている。
　のは、…うん、いや、さすがにもう引かれる。自分でも引きそう。

　ちょっとだけ自虐的に笑うと、後ろから風が吹いたような気がして。

　 …ふと、後ろを振り返ってみた。

・

　