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僕とアイツとあの人と【佐藤　淕】ページ21

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僕のお父さんは科学者だ。
僕のお父さんは有名な会社に勤めていたけど、クビにされた。
だから、世界を見返してやると、そう誓ったらしい。

僕のお父さんが進めていた研究は、不老不死。
正確に言えば、死んだ人間をもう1度蘇らせるらしい。
その死体を使えば、きっとできると確証があったらしい。

そんなお父さんが実験体に使ったのは、僕のお姉ちゃんだった。
佐藤朱音。僕と同じ栗色の長髪で、優しい女の子だったんだって。
彼氏も居たし、何より自分より他人を1番に考える人だった。

でもお姉ちゃんは病弱で、余命が1年あるかないか。
お父さんは生きるか死ぬか分からない娘の為に医療費を払い続けるのは疲れたんだって。

だから、実験体にした。

ウィィィン、となる機械の中。
お姉ちゃんの代わりに僕が生まれた。

そう、お父さんは人間の死体から別の人間を生み出すことに成功してしまったんだ。
でも、勿論僕にお姉ちゃんの記憶はない。
だから僕は「佐藤淕」として生きていくんだ。
ある意味人造人間、だね。

勿論この事実を知ったお姉ちゃんの彼氏は殴り込みに来たさ。
でももうお姉ちゃんなんてこの世に居ないから、取り戻せるはずなかった。
お父さんだって、死んだのに。
馬鹿だよね、お姉ちゃんの彼氏。

……馬鹿だよね、黒澤棗。

君が愛した佐藤朱音は君の大嫌いな佐藤淕になってるんだから。
本当に、滑稽だ。

でも、どうしてだろうね。
お姉ちゃんが死んでから、居なくなってから。
女性を…人さえも愛そうとしない君に、涙が出てきてしまうのは。

どうしてだろうね。
「もう、良いよ」って優しく言ってあげたくなるのは。

お姉ちゃんが死んでから、更に修羅の道に走ってしまった君。
もう、誰も愛さないと決めたのかい？
本当に、馬鹿だね。

「…なつ、め……」

あれ、おかしいね。
僕の口から君の名が出てくる訳がないのに。

おかしいね。
君に嫌いだって言われたら、胸が苦しくなるんだよ。

おかしいや。
君が「朱音」と言う度に、返事をしたくなっちゃうんだよ。

おかしいね。おかしいや。
誰も居ない虚空に向かって「お姉ちゃん」なんて。

「…朱音。」

「…バカ棗。」

あぁ。
僕に足りないのは

お姉ちゃん。