【参加者大募集中！】SnowSchool【短編集版】 (ページ14)

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万谷辞は干物である。【万谷辞】ページ14

「………。」

階下で電子音が鳴ったことに気が付き、あからさまに顔を顰める青年。

彼の名前は万谷辞(ﾖﾛｽﾞﾔｺﾄﾊﾞ)。
このやる気のない服装や目つきの悪さからは想像もつかないかもしれないが、彼が通う学園の生徒達の間で万谷辞と言えば、チャラい割に成績のいい調子のいい奴──である。

特別モテるという訳では無いが、それなりに女子とも交流はあるし、ノリのいいグループとつるんでいる辞。しかし、彼には学園では話せない秘密があった。

それがこの、俗に言われる干物生活をしていることである。

彼のチャラさは実は研究に研究を重ね作られたもので、本来の性格は「本の虫の根暗」と小中学生の時の級友たちに揶揄されていたりした(特に気にしてはいなかったが)。

そんな彼がチャラ男へと変貌を遂げた理由は、中学時代の苦い思い出にあるのだが……。

「……( �・－�・ )ﾁｯ」

ひとり静かな読書時間を邪魔された干物男はノスタルジーに浸ることはなく、機嫌悪く玄関へと向かう。

「…誰すか。」
「私ー。母さんがごはん余ったから持ってけって。」

その声を聞いて若干度の安心と、声の主とその母親に対する感謝、申し訳なさ……はあまり思わないが。

そんないつも通りの気持ちでドアを開ける。

「…いつもありがとうございますって言っといて。」
「いや私に対しての感謝は???」
「……いつもありがとうございます。」
「よろしい。はい。」

手渡された料理は温かく、夜の空気はより冷たく感じた。

「てかもう夕飯時か……」
「そうですよ。……ちゃんと食べなよ。あんたの知り合いみんな口を揃えてそういうでしょ？」

そういえばこの間…不知火にも言われたような。
そんなに気にすることなのか、と思いながらも、赤髪の少女に「わかった」と告げる。

「ん、じゃーね辞。今度また学校の行事で会えると思うけど。」
「……生徒会頑張れよ、律。」

幼馴染の微妙な距離感。
それが元来の、干物的な辞の感覚には心地いいのだった。

ーーー
律さんお借りしました！