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何だかんだで【藍咲暖】ページ1

「今度、そっち行くから」

それだけが書かれたメール。差出人は元雪崎学園生徒､藍咲奏だった。察しがつくとは思うが、暖の兄だ。奏は無愛想で口が悪く素直ではない、それは人見知り故しょうがない事なのだがそれを暖は良く思わなかった
そんな兄とは対照的に暖は明るく元気、素直でイタズラ好きだった。
正反対だからなのか兄弟喧嘩漬けの毎日だった。
小さな頃は仲が良かった。だが、歳を重ねるに連れ喧嘩が増えていく。能力を持っている兄、持っていない弟。兄は無愛想､弟は社交的。比べられることは多かった。
暖も奏もそれが嫌だった。嫌で嫌でしょうがなかった。兄がいなければ、弟がいなければ。そんな思いからか、ほとんど話すことは無かった。
正反対な兄弟だったが一つ、共通点があった。

――――――――――兄弟は音楽を愛してやまなかった。昔親に連れていかれたコンサートに心を惹かれた。
一つの楽器から奏でられる音楽。複数の楽器のハーモニー。どれもこれも、素敵で､綺麗で。こんな風に演奏してみたい､そう感じた。

「兄ちゃん。」

暖は小さく呟いた。どれだけ喧嘩しても、嫌いだと言っても､何だかんだでは奏のことが好きだった。それを言葉では伝えられず口から出るのは憎まれ口だけ。性格は正反対とは言え、流石兄弟。根元は同じなのだった。
メール画面を見て微笑む暖はとても幸せそうな顔をしていた。

―――――――あぁ、何だかんだで俺も兄ちゃんのこと､大好きだ。