天使と悪魔 (ページ3)

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聡明な声ページ3

どのくらい、歩いたのだろうか。

一向に森を抜ける様子はない。それどころかどんどん木が増えてるような、気がする。

それに、少し暗くなってる気もする。

ズキズキと痛む頭で、ゆっくりと上を見上げた。
生い茂った森から少しだけ覗く空は薄暗いオレンジ色に染まっている。

ダメだ、もう、夜になってしまう。
帰ったところで私の居場所はもうどこにも無い。

食べ物も、安全な寝床も、暖かな人の温もりも今の私には何も無い。
何を必死になっていたんだろう。帰る場所なんてないのに。

途端に冷静になってその場に崩れ落ちた。
身体が重たい、頭も痛い。もういっそここで命尽きるまでいようか。

獣って何かな、狼かな。それとも熊かな。

痛いのはやだな。死ぬなら一瞬で殺して欲しいよ。
なんて思うのはもう末期なのだろうか。

でも、もう、痛いことも苦しいこともいっぱいいっぱい頑張ったし、いっか…。

ゆっくりと息を吐きながら、目を伏せる。
視覚が失われると途端に聴覚、嗅覚が仕事を始める。

人間の体はなんて都合よく出来ているのだろうか。

微かに聞こえる音、鮮明に聞こえる音、全てを感じ取ろうと聴覚を目一杯研ぎ澄ます。

風の音…？いや、違う、誰かの足音…？それに血の匂い…？
逃げないとダメなはずなのに、目は開かないし、身体も動かない。

「〜〜！！〜〜〜！？」

あぁ、人の声が聞こえる気がする。
澄んだ聡明そうな声。