選ばれし者とその妹２ (ページ5)

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Story 55 ページ5

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　三十分後、Aは『漏れ鍋』の中庭に出て決まった五つのレンガを時計回りに杖で叩いた。レンガが動いてアーチ型の入り口が広がり、人で賑わうダイアゴン横丁が現れる。

　フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に着いた時には既に沢山の人だかりができていた。どうやらギルデロイ・ロックハートが自伝発売のサイン会をしていたらしい。
　それからまもなくして本人が姿を現した。ブロンドの髪のハンサムな若い男性で寒色のローブをまとっている。
　一旦離脱するために二階へあがるとそこにはドラコの姿があった。

「やあA、一人かい？」

「ええ、ちょっとね」

　隣に行って手すりから下を見下ろすとちょうどハリーがカメラマンに引きずられるようにしてロックハートの所に連れて行かれたところだった。

「皆さん、なんと記念すべき瞬間でしょうか？ハリー君が私の自伝『私はマジックだ』を買いに立ち寄ったのです」

　日刊予言者新聞ベストセラー二十七週連続一位、などとロックハートが自著の自慢をしている間にAは人垣を見渡し、すぐにロンを含めたウィーズリー家族を見つけた。

「私の全作品をハリー君に無料で差し上げます。……ところで妹さんは一緒ではないのかな？」

「お呼びだぞ」

　からかうように言ったドラコにAは「やめておくわ」と答えた。こんなところで目立つのは恥ずかしかった。
　
「この九月から私はホグワーツ魔法魔術学校にて、『闇の魔術に対する防衛術』担当教授職をお引き受けすることになりました！」

　ロックハートが発表すると客たちは拍手し、女性たちからは黄色い声があがった。
　Aはロックハートのファンの女の子たちの特徴を一人一人見てからおもむろに髪を解いて三つ編みにした。似たような外見にしたほうが警戒されにくいだろう。
　本を購入してからさりげなくハリー達の列に紛れると、ちょうどドラコが階段を降りてきた。

「いい気分だろうねポッター。有名人のポッター、ちょっとその辺に観に行くだけで大見出し」

　するとロンの妹のジニーが「ほっといてよ、ハリーが望んだことじゃないわ」と睨み、Aは一目で彼女のことが気に入った。

「おやポッター、ガールフレンドかい？」

「――これドラコ、失礼するでない」

　ドラコの背後から父親と思われる男性が姿を現した。息子と同じ冷たい灰色の目にプラチナブロンドの長髪。ステッキの持ち手には牙を剥いた銀色の蛇の頭が取り付けられている。