選ばれし者とその妹２ (ページ3)

今日:7 hit、昨日:89 hit、合計:145,922 hit

Story 53 ページ3

それからメイソン夫妻は怒って帰ってしまい、商談が失敗したバーノンおじさんは乱暴にハリーを二階に引きずって行った。

「もう、お前もAも学校に戻らせんぞ！ろくでもない友達にも、二度と合わせん。絶対にだ！」

　とうとう恐れていたことが起こってしまった。これは一刻を争う事態だとAはトランクとアレスの鳥籠を手に取り、玄関に向かった。

「お前はそこにいろ。Aを連れてくる」

　上からバーノンおじさんがそう言う声が聞こえた直後、Aは外に飛び出した。

　この時間には滅多に車が通らない。だが、はやくここを去らなければすぐに連れ戻されてしまう。どこかへ隠れてようか。そう考えた時、実にタイミングよく一台の車が通りかかり、Aの前で止まる。

「あなた、一体どうしたの？」

「お願いします、乗せてください！」

　Aが頼んだ時、遠くで玄関の扉が開いた。

「こ、こらA！戻るんだ！」

　仰天した様子のバーノンおじさんが叫ぶ。
　女性は何も言わずに車のドアを開け、Aが乗り込んだのを確認すると発進させた。まだ何か叫んでいるおじさんの姿が遠ざかり、やがて見えなくなると女性は「どこへ行きたいの？」と尋ねた。

「ロンドンへ」

　息を整えながらAが答えると「私もそこへ向かう途中なの」と彼女は優しく笑った。親に虐められている子供の夜逃げだと思っているに違いなかった。とはいえ、その半分は間違ってはいないが。

「可愛いフクロウね」

「ありがとうございます。アレスっていうんです」

　緊張の解けたAはこれからのことについて考えを巡らせ、とりあえず『漏れ鍋』に着いたら真っ先にロンにフクロウ便を送って助けを求めようと思いついた。

＊

　やがて車はドルリー通りのレコード店の前で止まった。『漏れ鍋』はその店の隣にあるが、マグルからは見えないように魔法がかけられている。

「この辺かしら？」

「はい、ありがとうございます！」

「じゃあ、気をつけてね」

　親切な女性の車が走り去ってからAはおそるおそるパブへ足を踏み入れる。ここへ来たのは一年の頃以来のため、とても緊張していた。