選ばれし者とその妹２ (ページ16)

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Story 66 ページ16

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　目が覚めた時、Aは一瞬まだ夢を見ているのかと錯覚した。頭はぼんやりとしており、体は長い間動かしていなかったような感覚がする。
　彼女は視線を右に動かし、まず高い天井から吊り下げられた鉄製のシャンデリア、次に寒色の衝立を認識した。そこでようやくここが医務室だと気づく。

「おお、そろそろ起きると思っていたところじゃ」

　隣から聞こえた朗らかな声に、Aは驚いた拍子に危うくベッドから落ちそうになる。

「ダ、ダンブルドア先生！？あの、私は……」

　一体何故ここに、と問いかけたがすぐに廊下で起こったことを思い出した。ジニーと会った後、窓ガラスに映った何かを見て……。

「そうだ日記！トム・リドルという人の日記が……」

「あの日記のことなら心配はいらない」

　彼はAが眠っている間にあったことを教えてくれた。ヴォルデモートの魂の一部が入ったあの日記が生徒を操っていたこと。秘密の部屋の怪物をハリーが倒したこと。

　毒蛇の王バジリスク。サラザール・スリザリンが秘密の部屋に残した怪物の正体で、黄色の瞳は目視した者を即死させる強力な眼光を持ち、鏡や水面などで間接的に目を合わせても石化するという。ミセス・ノリスや寮生たち、そしてAは直に目を合わせなかったために命拾いをしたのだった。

　ダンブルドアはAのノートを開いた。ちょうどトム・リドルのアナグラムが書かれた箇所だ。

「君もあの日記の持ち主をよくぞ解き明かした」

　石にされた生徒たちやミセス・ノリスは無事に目を覚ましたと聞き、Aは安堵した。

「それからロックハート先生じゃが……」
　
　ギルデロイ・ロックハートの輝かしい功績は全て他人の手柄を横取りしたものだった。挙げ句の果てにハリーとロンに『忘却術』をかけようとして呪文が跳ね返り、自分が記憶喪失になってしまったらしい。流石のAも、まさか彼が詐欺師とまでは予想していなかった。

「マルフォイさんはどうしてあの日記を……」

「あの日記を身内が持っていることが知られればアーサー・ウィーズリーを貶めることができる。そう考えて、ヴォルデモートからの預かり物をむざむざと手放したのじゃろう。もっとも、君が襲われたと知った時は顔色を変えたがの」
　
　つまり度を越した嫌がらせというわけである。息子が巻き込まれる危険性を考えなかったのだろうか。Aは心底呆れ果てた。