選ばれし者とその妹 (ページ20)

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Story 19 ページ20

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　ハリーやその他の生徒が大広間で自習やゲームをしていた頃、Aは中庭に背を向けて廊下の窓の端に腰掛け、何冊か持ってきていた教科書を読みはじめた。最初に開いたのは魔法薬の本で、『気をつける』と言った通り、暗記するつもりである。次当てられた時に答えられなければレイブンクローが減点されてしまうかもしれないと危惧していたのもあったが、それ以前に馬鹿にしてきたスリザリン生たちや、周りを見返したいという気持ちが強かったのだった。

　数分前、生徒たちはAを見つけるたび近づいてきていろいろと質問してきた。入学してから数日経っているにも関わらず。質問の内容のほとんどがハリーについてのことで、A自身についてはどうでもいいようだった。

『見て、ハリー・ポッターとその妹よ！』

『あ、生き残った男の子の妹だ！』

　“例のあの人”ほどではないが、近づく生徒のほとんどがAのことを『生き残った男の子の妹』と呼び、名前を呼ばれることはあまりなかった。そのたびにAは『ハリーの妹でなければ私は価値がない』と自嘲していた。

　だって、そうよね。魔法を使っていたのはハリーだもの。私は何も出来ていなかった。マグルの世界の学校では成績上位だったのに、ここでは何の意味も持たない。私に話しかける人はだいたいこう訊いてくる。『ハリー・ポッターはどこ？』。みんなはハリーを求めている。私じゃない。

　誰かの足音が近づいてくるがAは気にならなかった。

「私はハリー・ポッターのおまけでしかないんだ」

　思わずそう呟いた時、足音が止まったがAはあまり気にもとめず教科書をめくった。ある程度読み終えたところで、近くにいる誰かが一向に去る気配がないことに気がついたAは顔を上げた途端に驚いて本を落としてしまった。

「あ、す、すみません、お、驚かして、しまって」

「いえ、大丈夫です！えっと、会えて嬉しいです、クィレル先生」

「こちらこそ」

　クィレルは距離を取ってAの隣に腰掛けた。他の生徒が来る気配はない。だからこそAは大広間ではなくここを選んだのだった。

「すみません、気がつかなくて……」

「いいんですよ。ただ、一人で勉強してるところを見てなんだか懐かしくなったので」

　実は私もレイブンクローだったんです、とクィレルが言うとAはまた驚いた。