Story 27 ページ28
ハーマイオニーに勝つか負けるか以前に、そもそも自分に本当に魔法が使えるのか。Aはずっとそんな不安に駆られていた。不得意なのは『杖を使った授業』だったのだから。
ペチュニア叔母さんが言っていたように、普通の家庭から魔法使いが生まれるなら、血の繋がった兄妹でも魔法が使えるのとそうでないのがいてもおかしくない。ネビルを助けたのは、本当に私だったの……？
『ハリー・ポッターの妹ってさ、暗記科目とかは得意なのにマグゴナガル先生の授業とか、フリットウィック先生の授業とか、そういう杖使ったのは苦手だよな』
『あ、それ私も思ってた。あの子が魔法使ってるところ、ネビルの件以外で見たことないもの』
『もしかしたらあれ、Aじゃなかった？ 本当は魔法使えないんじゃないか？』
『つまりスクイブってことね』
教室を移動する際、Aは生徒たちが陰口を言っているのを偶然耳にしてしまってからずっと悩んでいた。怒りは感じず、ただ彼らが言っていることが本当かもしれないという恐れがあったのだった。
そして、その陰口を言っていた生徒の中に同じレイブンクロー生がいたことが少しショックだった。
＊
「じ、呪文学の本、も、もう暗記、したんですね」
「はい、杖の振り方とか覚えておけばどこでも練習出来るので」
次の日の休み時間、中庭近くの廊下がすっかり気に入ったAはそこでクィレルと談笑していた。
「と、ところで……手の傷、ど、どうしました？」
「あ……転んじゃったんです」
嘘ではなかった。ただし、スリザリン生に足を引っ掛けられたせいだったが。やり返してこないAはハリー・ポッターに対する憂さを晴らすのにちょうどよかったのだ。
「なんか、な、悩んでますか？」
「あの、実は……」
スリザリン生の虐めは黙っていたが、自分の魔力の不安は思い切って話そうと思った。
「……なるほど。つ、つかぬことを訊きますが、マグルの学校に通ってた頃は、どんな感じ、でした？」
「成績面では上手く行ってました。ただ、よく虐められ……」
しまった、とAはつい口を滑らせた自分を責める。
「その時、怒りとか、感じました？」
「最初は怒りました。でも……怒りを感じた時は必ず変なことが起きて」
ああ、そうだ。Aは思い出した。
私が怒らなくなったのは、無意識に魔法を使ったハリーに対するおじさんとおばさんの態度を見てからだった。
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作者名：闍弥嵩 李 | 作成日時：2020年1月2日 17時
