貴方は愛を誓いますか？【SLH】【antsa】【短編集】

雨音が響いていますね。(ron) ページ40

りおんサイド ※学生設定

り｢雨、かぁ…｣

休み時間。窓際の席に座り、ぽつりと呟いた。
午前中は眩しいくらいの晴天だったのに､午後に
なって天気が急変｡バケツをひっくり返したよう
な雨が降ってきた。念の為、折りたたみの傘は
常に常備しているから心配はないだろう。

それはあくまで僕だけが対象の話であって、き
っとあの子は僕の“傘”を目当てに走ってくる。



これから部活の友達と別れ、昇降口へと向かう｡
僕がよく知る人物は、空を見上げながらそこに
立ち尽くしていた。

り｢…待ってた？｣

僕に気づいて視線をこちらへと向けた彼女。

｢りおん！ナイスタイミング！傘入れて！｣

り｢僕のこと待ってたくせに。｣

｢ありゃ、バレてた？笑｣

彼女は僕の幼なじみであるA。忘れっぽい
ところがあって、しょっちゅう僕を頼ってくる｡

り｢幼なじみですからね｣

僕は常備している傘を開き、Aの頭上へと
持っていく。雨は嫌いだ。だけど、この2人の
時間は好き。めんどくさいなぁ…りおん…。



他愛のない話をする帰り道。誰にも邪魔
されないこの空間が、僕にとって幸せに感じた｡
否、感じていた。の方が正しいのか。


｢私、彼氏出来たの。1つ上の先輩。｣


彼女の口からその言葉が吐き出された途端､時が
止まったかのようだった。その言葉が示すもの…

｢今日は先輩部活なんだよね。りおんばっかりに
頼るのも悪いと思って､先輩に傘入れてもらおう
と思ってたんだけどさぁ…ごめんね？いつも。｣


“終わり”。そんな言葉が頭に思い浮かんだ。

り｢そっ、かぁ…。良かったね。｣

『Aー！』

突然の声に驚いて振り向くと､僕よりも背が高く
スタイルのいい男の人が傘をさし走ってきた。

｢先輩！？どうして…？｣

この人が、Aの彼氏さん。なんだ、僕には
到底適わないような人ではないか。

『雨で部活が中止になって、迎えに来た！』

そう言ったあと､俺のことをじーっと見る先輩。
お前誰だよ。そう言わんばかりの視線。

｢あ、幼なじみのりおん！先輩が部活だから、
傘入れてもらってたんだ！それだけだよ？｣

『俺の傘大きいし、送ってくよ』

悪意しかない言葉に腹が立った。でも俺は勝て
ないんだから。逆に笑ってやったよ。

り｢Aをお願いします｣

｢りおんも気をつけてね！じゃあまた！｣

そうして2人は歩いていった。1人の寂しさを感
じるよりも、失恋の寂しさを感じていた。

｢雨音が…響いていますね…。｣

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