貴方は愛を誓いますか？【SLH】【antsa】【短編集】

見えない彼と私。(sbkn) ページ34

※sbさんの眼について触れています。
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Aサイド

私は生まれつき片目だけが見えない。見えない
方の目は白眼で、私はこの眼が嫌いだった。

｢私も同じなんだ。見て。｣

貴方と出会うまでは、の話だけどね。




罵詈雑言なんて、私の人生では当たり前だった｡
たくさんの偏見も受けてきた。その度に私は心
の傷を抉られているような感覚を味わっている｡
その人たちを見返したくて､片目が見えなくても
出来ることはあると分かってもらいたくて、踊
りを始めた。でも思うように上手くいかない。

｢…また来ちゃった…｣

命は尊いものだ。そんなの綺麗事でしかない。
私は本来､出来るはずのなかった命なんだから。

｢…冷たいな、｣

裸足でその冷たさの中に近づいていく。今回ば
かりは途中でやめることのないように。そう、
自分に言い聞かせていた。…はずだった。

｢何してるのっ！！？？｣

突然耳元で大きな声が響いた｡そして瞬時に腕を
ぐいっと引っ張られて体制を崩す。咄嗟に目を
瞑ったが、痛みはなく、恐る恐る目を開くと、
とある男性の上にまたがる形になっていた。

｢…どうして止めるの、折角決意したのに。｣

我ながら愛想のない言葉だとは思う。けどこの
思いはそのままの言葉だった。すると、男性は
片目にかかった前髪をよかそうとする。

｢…っやめてよ…！｣

私は男性の手を弾いた。でも眼帯をしているの
は見られたはず。嫌だ。また何か言われる…。
でも彼の口からは想定外の答えが返ってきた。

｢私と同じ。見て。｣

彼は自分の右にかかった前髪をよかす。そして
その前髪から覗いたのは、私と同じ白眼の眼。

｢私もこっちの目、見えないの。｣

｢私と…同じ…白、眼だ…｣

私は自然と眼帯に手をかけていた。初対面なの
に、貴方ならきっと大丈夫だと思えたから。

｢…！｣

｢私も左目だけ白眼なの。網膜剥離、ってやつ｡｣

誰かに目のことを話したことなんてなかった｡嫌
われるだけだから｡気味悪がられるだけだから｡

｢奇遇なのか運命なのか…笑 私もだよ。｣

｢貴方も…網膜剥離、なの…？｣

そう問いかけると、貴方は控えめに頷いた。

｢…嘘。初めて同じ人、見た…｣

なんとなく気になって、貴方に私は問いかける｡

｢…貴方、名前は…？｣

貴方は私の言葉に微笑みながらこう答えた。

芝｢高橋健太。芝健って名前で活動してる。｣

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